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イラン司令官殺害で「米vs.中露」大国間の対立が過熱する理由

そして日本はまた蚊帳の外

不気味な予言が的中した

先週のこのコラムで予見した通り、早くも2020年のアジアで、「乱の時代」が始まった。

現地時間で1月3日の夜明け前、アメリカ軍がイラクのバグダッド空港に空襲をかけ、降り立ったイラン革命防衛隊のカセム・スレイマニ司令官を爆殺した。この一件によって、1979年以来の恩讐の敵であるアメリカとイランが、戦火を交える可能性が出てきた。世界は年明けから戦々恐々である。

私はこの時、北京にいたが、中国メディアも速報を流し、以後はハチの巣をつついたような騒ぎになった。

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実は私は昨年末、日米外交を半世紀にわたって行ってきた元日本外務省事務次官に、2020年のドナルド・トランプ政権と、アメリカ大統領選について伺った。その際、その元外交官は、不気味な予言をしていたのだ。

「トランプ大統領のことを、誰もが『予測がつかない大統領』と言うが、私に言わせると、トランプほど予測がつきやすい大統領は他にいない。なぜなら、『私がもしもトランプだったなら、どんな行動を取りたいだろうか』と類推すると、たいていその通りになるからだ。トランプは、歴代のアメリカ大統領と較べると、極めて単純な男なのだ。だから私はこの3年近く、たいていのことは当ててきた。

そんな立場から言わせてもらえば、2020年のトランプは、おそらく戦争に打って出るだろう。トランプは自分の全人生を、11月の大統領選挙での再選に賭けている。そして、それを実現するには、戦争を起こすのが一番確実だからだ。

すでに下院で可決され、年明けには上院で審議が始まる大統領の弾劾も、夏に決まる民主党公認候補の追撃も、すべて蹴散らすことができるのが戦争なのだ。

 

本来ならトランプは、ビジネスマン出身だから、何でもカネに換算して考える。そうすると、戦争はカネの無駄使いに映る。だからトランプは、戦争を回避したがる傾向があった。2017年の北朝鮮との激しい対立の時も、本気で北朝鮮と戦争をしようなどとは思っていなかった。

ところが今回は、金儲けよりも大事なもの、すなわち大統領選での再選がかかっているのだ。正確に言えば、トランプの周囲の強硬派が、トランプの鼻の下に『再選』というニンジンをぶら下げて、戦争へのゴーサインを促すだろう。

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1991年にブッシュ父大統領が湾岸戦争を起こした直後、支持率は90%に達した。それでも翌年の大統領選で、クリントンに敗れてしまったのは、戦争を起こした時期が早すぎたからだ。このことがトランプ共和党の教訓になっていて、戦争を起こすなら大統領選の年に限るのだ。

では、トランプが戦争を起こす相手はどこか? 北朝鮮ではない。第一に、相手として弱すぎて、アメリカ国内で盛り上がらないからだ。第二に、アメリカが北朝鮮との戦勝で得られるものがほとんどないからだ。第三に、在韓米軍や韓国在住のアメリカ人など、多数のアメリカ人が犠牲になるリスクがあるからだ。

それなら貿易戦争で揉めている、21世紀の最大のライバル、中国か? それも違う。第一に、中国は逆に相手として強すぎて、11月の大統領選までに白黒をつけることができない。第二に、中国を本気で叩くと、アメリカの経済的損失が大きすぎて、かえって票を失うリスクがある。

そうやって消去法で考えると、トランプが2020年に戦争を起こすターゲットにしているのは、イランしか思い当たらない。2020年、アメリカとイランとの間でドンパチが始まることを、われわれは覚悟しておくべきだ」

この話を聞いた時は、正直言って「そんなものかなあ」と半信半疑だった。だが、それからわずか3週間ほどしか経っていない現在では、その慧眼ぶりに恐れ入るばかりだ。

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