酒に酔い、担ぎ込まれて「日銭を奪われた」冗談のようなマジな話

魔窟に踏み込んでしまった…
高木 敦史 プロフィール

キッチンを抜けた先の部屋はほぼ真っ暗でしたが、天井から薄いピンク色のカーテンが間仕切り代わりにつり下げられ、十畳相当の室内がいくつかの房に区切られていました。

それぞれの房にはそこはかとなく人の気配があります。話し声はないものの、生き物の体温の気配がたくさん感じられました。更に気づけば何かアロマキャンドルのいい匂いが充満しています。

キャミソール、ピンク色、アロマキャンドル……。女性がいちばん手前の房のカーテンを捲ったときに、一畳ほどの空間に布団が敷かれているのを見て、私の直感は確信に変わりました。

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<どうしよう。ここは、漫画とかテレビの特番なんかで見たことのある、何らかの法に触れていそうなヤバイいかがわしい店だ>

しかし時既に遅し。しこたま飲んだ酒が抜けず、酷い頭痛で頭はろくに回りません。女性は朦朧とした私のコートを慣れた手つきで脱がします。気づけば私は「横になって」と促されるまま布団に潜り込んでいました。

 

身体が室内に充満しているのと同じアロマの匂いに包まれます。そして女性が横に添い寝した気配を感じるのとほぼ同時に、たぶん二度目の気絶に落ちました。

俺の全財産が

それからどのくらいか、はっと目覚めると、先ほどの女性が隣で寝っ転がって数独を解いていました。なるほど数独なら日本語が分からなくても遊べるものな、と無意味に感心していると、彼女は私の起床に気づいてにっこり微笑み、「水モッテクルヨ」と房の外に消えました。

頭痛がいくらかマシになり、思考を取り戻した私は再び焦ってすぐさま枕元に丸めてあったコートを漁ります。幸いなことに、ポケットには財布もケータイもありました。

こういう場所に来たのは初めてだけど、漫画やドラマで見る限り「そんなつもりはなかった」と言っても出してもらえるはずがない。そもそも女性のいる空間で寝入ってしまった時点で、対価は発生しているのではないか。どうしよう……面倒ごとは嫌いだし、金で解決出来るならその方が手っ取り早いかもしれない。手持ちの金で足りるだろうか? 財布の中身に思いを馳せます。