2020年の初競りで「一番マグロ」を競り落とした「すしざんまい」の木村清氏〔PHOTO〕Gettyimages

マグロ初競り狂騒曲「1億9320万円」で落札決まるまでの全内幕

276kg、大間マグロの迫力

毎年、一匹のマグロに驚くほどの高値がつく「初競り」。その熱狂はテレビによって演出された側面が大きいことは昨日の記事で指摘した通りだが、今年もやはりその値段は驚くべきものになった。「億越え」の内幕を、ノンフィクション作家の中原一歩氏がレポートする。

「一番マグロ」の威容

元号が令和になって最初の初競りを見ようと、豊洲市場の競り場にはおよそ200人もの水産関係者が集まっていた。1月5日の早朝5時のことである。様々なマグロがズラリと並ぶ中、ある一匹のマグロの周囲に黒山の人だかりができていた。

そのマグロのそばに黄色の長靴を履いた「あの男」がいた。今や、ある意味で日本の正月の顔となった人気寿司チェーン「すしざんまい」の木村清社長だ。この「マグロ大王」の異名をとる木村氏が、どの魚をいくらで競り落とすのか。野次馬を含め、集まった群衆の関心はそれに尽きていた。

 

マグロの競りの世界には「一列目」という言葉がある。一列目とは、競りを主催する「卸会社」が、その日、競りに出品される全てのマグロを精査し、品質が良いと思われる順番に番号をつけて並べた時、その番号が一桁台の、その日、最も品質が良く、高値がつくと予想されるマグロのことである。

この日、小学校の体育館ほどの広さのマグロの競り場には、所狭しと大小、様々なマグロが並んでいた。数あるマグロの中でも「マグロの最高峰」と言われるのが日本近海で獲れた生の国産本マグロ(クロマグロ)である。

1月5日の競り場〔PHOTO〕Gettyimages

しかし、初競りの日ばかりは一攫千金の「一番マグロ」を夢見て、全国の水揚げ港から数多くの国産マグロが集まる。この日、競り場に並んだ国産本マグロは、大小合わせると100本以上あったように思う。