あっという間に消えていくお金

私は、そういうことを露も知らずに、伯母の恵子のことを「しっかりものの長女」だと認識していた。ごく当然のこととして、母を預けるにあたっては、いくら身内でも最低限の家賃分くらいは払おうと決めていた。母の貯金通帳と印鑑は私が預かっている。毎月決まった日に私がお金を下ろし、伯母に現金書留で送るという約束をした。

判断力の怪しい老婆に渡すのだ。普通に送ったら、雑な使われ方をするだろう。昔ながらのやり方で、食費、光熱費、雑費をそれぞれ封筒に分け、母のお小遣いは封筒に名を書いた。合計10万円程度の送金だった。もちろん、足りなければ追加で送金するつもりだった。

-AD-

ところが、送金して1週間も経たないうちに、母からヒソヒソ声の電話がかかってきた。

「お金、ください。もう千円札1枚です」

どんな状況で母が電話をかけてきていたのか、このときの上松さんは知らなかった(写真はイメージです。写真の人物は本文と関係ありません) Photo by iStock 

持ち家だから家賃は不要だ。伯母の年金もあるはずなのに、どういうことだろう。5日間で10万円以上使い切ってしまったということなのか?  小分けにした母の小遣いもなくなったらしい。あの家に出向き、伯母に直談判しなくちゃいけないじゃないか。では、いつ? 唸り声が出る。 

母を伯母に預けた直後から、私は両親のいたマンションを引き払う作業に忙殺されていた。サラリーマンの夫は平日いない。土日だけの作業ではいつまで経っても片付かない。一人で電車を乗り継ぎ、家の中のもろもろを処分しに行かねばならなかった。

困ったのはゴミの収集日だった。ゴミ収集といえば早朝である。食事も取らずに家を出て、7時ごろには実家に到着し、7時半までにはゴミ袋を集積所に出す。土曜日には、当時小学校3年生だった娘が付き合ってくれた。大(おお)パパと登志子さんのため、と言って、娘は獅子奮迅の活躍を見せた。

最後に、家具類と父の残した膨大な冊数の書籍が残った。それらを処分する段取りを組まねばならないのに、ここへ来て「生活費問題」が浮上するとは。