トランプ突然の「イラン攻撃」が、安倍外交を窮地に追い込むまで

米国とイラン、どっちに付いても…
松岡 久蔵 プロフィール

現に2015年にオバマ政権でイラン合意をマネジメントした専門家は、トランプ政権では信頼されずパージされており、まともに中東情勢を理解している人間が政権中枢からいなくなっている。トランプ政権が歴代政権の方針を顧みず、イスラエルの首都をエルサレムに移転した『大胆さ』もここにつながってきます。要は、中東がよくわからないからムチャクチャなことができるわけです。

第二に、米国が全面戦争にならないようリスク管理に気を配っていたのであれば、完全な隠密作戦に出るはずで、今回のように暗殺をすぐに公表したことも解せません。もし今回暗殺された司令官たちに自制を促すことが目的だったなら、『お前をいつでも殺せるよ』という恫喝さえできればいいはずです。

いきなり実力行使に踏み切り、しかも即座に公表したのは、イラン政府を牽制する目的か、トランプ大統領が何も考えず自分の力を誇るためだったのか──いずれにしても、熟慮に裏付けされた行動とは考えづらい」

米国の拙速な実力行使は、今後両国だけでなく関係各国をも疑心暗鬼の渦に巻き込み、中東情勢を急速に悪化させる可能性が高い。第一次世界大戦も偶発的な要因の連鎖で拡大していった、という歴史的教訓に学ばねばならないだろう。

 

日米「信頼関係」の真価が問われる

イランのラバンチ国連大使は3日、「軍事行動には軍事行動」と報復する構えを見せており、両国の緊張はさらなる高まりを見せている。4日には米軍がバクダッド北部で新たに空爆を行い、現地の民兵6名が殺害されたほか、米国防総省は中東地域への米軍約3500名の増派を発表した。

米国では「米国の世論は世界の世論、米国の正義は世界の正義」(駐米経験のある全国紙記者)という風潮がある。今回のイラン高官暗殺も、トランプ大統領が民主党による弾劾から国民の目をそらし、イラクでの大使館襲撃に強硬に報復することで国内世論にアピールしたいとの思惑がある。