トランプ突然の「イラン攻撃」が、安倍外交を窮地に追い込むまで

米国とイラン、どっちに付いても…
松岡 久蔵 プロフィール

今回のイラン革命防衛隊司令官と同時に幹部が殺害されたイラク民兵組織は、15万人規模の兵力を抱えると言われている。この点について、海外のプラントなどで働く現地邦人保護を担う危機管理コンサルタントはこう懸念する。

「2015年には、安倍首相がカイロでイスラム国への対決姿勢を演説したことが引き金となって、ジャーナリストの後藤健二さんらが拉致され殺害されるという痛ましい事件が起きました。この事件ではっきりしたのは、日本人が考えるよりも、はるかに日本人はテロや拉致などの標的とされやすいということです。

イランでは、1979年に米国大使館が占拠され大使館員らが人質となった前例もあり、日本の海外拠点が襲われることも十分想定される。イラクにはバスラ、エルビールなどに日本企業の拠点が数多くあるうえ、サウジアラビアのダンマームやシャザーンなど、その他にも攻撃対象となる地域が少なくない。

これらの邦人を全て守り切るのは、はっきりいって不可能ですし、人質事件にでも発展すれば取り返しのつかないことになる。現地の日本企業は、経済活動をストップして在留邦人を強制帰国させるか決断を迫られていると思います」

 

トランプを制止できない

今回の米国による要人暗殺は、軍事的に熟考されていなかった色合いが濃い。攻撃後に大慌てで自国民に対する退避勧告を出したり、トランプ大統領が自ら「戦争をするつもりはない」などと火消しのための記者会見を開いたりしたことも、十分な調整にもとづいて作戦が行われていない証拠だ。先の防衛省関係者が解説する。

「大使館襲撃に激高して衝動的にやった、というのが実際のところだと思います。それだけ洗練されていない『素人仕事』の印象が否めない。

まず、米国は全世界で軍事力の配分を決めているので、イラクの2倍の人口を持ち、山がちなイランを攻めるとなると、かなりの兵力を振り分ける必要が出てきます。米軍高官はイラク戦争の泥沼化をイヤというほど味わっていますから、中東での全面戦争がまったく割に合わないことをよく知っている。つまり、米政府内でも軍事の専門家による制止が効かない状況になっていると推測できます。