2020年になり、オリンピックイヤーの今年はより「アスリートたち」の育ち方にも熱視線が注がれることだろう。錦織圭選手が全米オープンで準優勝した2014年にはテニススクール人気が再燃し、予約でいっぱいになったというし、ワールドカップのあとは小学生向けのラグビースクールが特需状態と報じられた。もちろん夢中になってスポーツに打ち込むのは素晴らしいことだし、経済効果もある。

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また、新学期がスタートし、受験生たちには本番が迫っている。まずは志望校に向けて努力してきたすべての子どもたちが笑顔になれることを祈りたいが、いずれにせよ、今は多くの人が「自分の将来」「子どもの将来」を考える時期だといえるのではないだろうか。

しかし、中学受験をはじめとした多くの教育現場を取材し続けてきた教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、多くの著書の中で、親が子どもに言う「あなたのため」という言葉の危うさについて語ってきた。大人の「思いやり」がときに暴走し、子どもをただ惑わすことにもなりうるというのだ。

それはどういうことなのか。おおたさんに、ティーンエイジャーに向けて解説してもらった。

錦織圭選手とさかなクンの
どっちを選ぶ?

質問。世界的プロテニスプレイヤーの錦織圭さんと、「ぎょぎょ!」と叫びながらテレビに登場する魚博士の「さかなクン」のどちらにもなれるとしたら、キミならどちらを選ぶだろうか。

さかなくん公式HPを見ると、どれだけの「成功者」かがよくわかる 「さかなクンオフィシャルサイト」より

もちろんどちらも「成功者」である。それもかなりの。ただ、世界的な知名度からいえば、圧倒的に錦織さんのほうが有名だ。稼いでいるお金だって錦織さんのほうが多いだろう。でも、どちらの人生が上等かなんて、誰も決められない。どちらの人生が幸せかなんて、比べようがない。

それなのに、「あのひとの人生は上等、このひとの人生はいまいち」などと、ひとの人生を勝手に比較して評価する大人は少なくない。どんな学校を出たとか、どんな会社に勤めているとか、どれだけ有名だとか、そんな“モノサシ”でひとを比べる。そしてその“モノサシ”を基準にして、本当に良かれと思って子どもたちにアドバイスをしてくれる。話はよく聞くべきだ。でも鵜呑みにしてはいけない。

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ものわかりのいいやさしい最近の大人たちは、それが親であれ学校の先生であれそれ以外の大人であれ、面と向かってキミたちに「こうしなさい」「ああしなさい」とは指図しない。でもその言葉の端々や表情からは、彼らのキミたちに対する期待がにじみ出ていることをキミたちは感じている。これまたやさしいキミたちは、できることなら彼らの期待に応えてあげたいと無意識のうちに思ってしまう。その気持ちが強すぎると、それがあたかも本当に自分がやりたいことであるかのように錯覚してしまうことがある。