「冤罪」を描いた復元図 Illustration by Getty Images

冤罪で「タマゴ泥棒」にされた恐竜、中国では「大物」へ出世の理由

恐竜大陸をゆく「日本も関係してます」
大宅賞作家の好評連載「恐竜大陸をゆく」、本年もよろしくお願いいたします。
安田峰俊氏が中国現地に加えて、福井県立恐竜博物館も取材してお届けする2020年第1弾は、あるメジャー恐竜の中国での意外な「扱い」を報告します。

命名から泥棒扱いされて…

白亜紀後期のモンゴルに生息したオヴィラプトル(Oviraptor)は、かなり昔から名前が知られている恐竜だ。名前の意味は「タマゴ泥棒」である。

1920年代に最初に発見された個体の化石が、角竜のプロトケラトプス(Protoceratops)とみられるタマゴのすぐ近くで見つかったことや、歯のないクチバシ状の口を持っていたことから、てっきり他の恐竜のタマゴを盗んで食べている恐竜だと考えられたのだ。

 

事実、現在37歳の私が子どものころに見た図鑑でも、プロトケラトプスの巣からタマゴを奪って走り去る姿の復元図が描かれていた記憶がある。

オヴィラプトルオヴィラプトル(左)とプトロケラトプスの復元図 Illustration by De Agostini / Getty Images

だが、現在の研究では、オヴィラプトルの近くで見つかったタマゴはこの恐竜自身のものだったとみられている。

オヴィラプトルはタマゴ泥棒ではなく、むしろ自分の子どもを守りながら化石化してしまった悲劇の恐竜だったのだ。彼女(?)にとってはとんだ不名誉な命名がなされたことになる。

オヴィラプトルの仲間の大多数の化石は東アジア内陸部のモンゴル高原で見つかっているのだが、一部は中国領内での出土例もある。

オヴィラプトル江西省で発掘されたオヴィラプトルのタマゴの化石 Photo by TPG / Getty Images

今回の原稿では、そんな中国出身のオヴィラプトルの仲間たちについて見ていくことにしよう。

熱河層群で見つかった小さな恐竜

まず紹介するのはカウディプテリクス(Caudipteryx:尾羽龍)だ。

こちらは約1億2460万年前の白亜紀前期に生息した古いオヴィラプトルの仲間で、発見地は遼寧省北票市。すなわち過去の本連載でもおなじみの、羽毛恐竜や鳥類・水辺の小動物などが数多く見つかる熱河層群から化石が出土した恐竜である。

カウディプテリクスの体長は70〜90センチ程度で、大型のオスのニワトリよりもひと回り大きいくらいの生き物だった。前足と尾の先に羽軸のある発達した羽毛を持っていたが飛行はできず、羽毛の役割は保温のためだったとみられている。尾の羽は扇形に広がっており、生前の外見はかなり鳥に似ていたはずだ。