フランス人の赤ちゃんのつぶやき

自分の家に帰ってきたボクは、その日から子供の仲間入り。パパと一緒に寝室の大きなベッドで安らかな眠りについているママを呼ぶために、ボクは力の限りを振り絞って泣かなくてはならないんだ。パパとママの寝室のドアが開く音を聴いて、ボクは泣き止もうかと思ったけれども、やっぱりやめて泣き続けたんだ。だってボクが静かになったことを知ればママは、パパの待っているベッドのある部屋に戻るに決まってる。だからボクは、ママがボクを抱き上げてくれるまでは、安心して泣き止むことができないんだ。

ママの産休が終わり、会社にいくようになったら、そんなボクのわがままは通じない。ちょっとやそっと泣いても、ママはボクのところにきてくれない。たまにパパが子供部屋のドアを細く開け、ボクがすやすやと眠っているのを確かめにきてくれることはあってもね。そのころにはボクにも生活のリズムができて、おいそれと夜中に目覚めて大声で泣くことはしなくなる。だからたまに、嵐や雷の凄まじい音がすると、怖い怖いと大声で泣きながら、おおっぴらにパパとママの部屋に飛び込むことができるんだ。

暴風で窓ガラスが壊れそうな音を立てていたり、雷がピカッと光ったりする夜だけ特別にボクにも、パパとママの寝室のドアを開けることが許されるからだ。ボクがパパとママが寝ている大きなベッドの横で泣きながら震えていると、いつもパパが飛び起きてくれる、裸でね。ところがパパは、震えているボクを抱いて子供部屋に連れ戻すだけ。もう雷がやんだから寝なさいといって子供部屋の明かりを消し、さっさとパパはママが待っているベッドに戻っちゃう。でもいいか、ボクだって大きくなればパパみたいに、ママと一緒に眠れるのだから。

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いかなる場合も、フランスでは夫婦別室はありえない。どちらかがチフスとかコレラに罹ったというなら話は別だが、長い人生を通じて彼らは片時も寝屋を別にしない。教会での結婚式に神父様がおっしゃったように、病めるときも苦しきときも助け合う。だから一方では、離婚が多いという逆説が成り立ってしまうわけだ。