厚生労働省が発表した人口動態統計の年間推移によると、2019年の日本の出生数の推計は、1899年の調査以降最低の86万4000人。出生数が死亡数を下回る数も50万人を超え、かなりのスピードで日本の人口は減少し続けている。

女性がフルタイム勤務で働くことが基本でありながらも出生率を高い数値で維持してきたことで、ずっと「出生率を上げる成功例」と注目されてきたのがフランスだ。ただし、そのフランスでも2018年の合計特殊出生率はここ4年間ずっと減少しており、政権による経済不安が原因ではと言われている。とはいえ、それでも2018年の数値は1.87。2018年の数値が1.42である日本よりはるかに高い。それはなぜなのだろう。

フランスパリに20年住み、現在は日本に暮らしている作家の吉村葉子さんは、多くのフランス人と話をして、フランスが「愛の国」と呼ばれる理由を実感したという。それをまとめたエッセイが、ベストセラー『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』の続編『激しく家庭的なフランス人、愛したりない日本人』(ともに講談社文庫)だ。そのエッセイから抜粋し、フランス人が出産しやすい理由は何かを「里帰り出産」という言葉にクローズアップしてお伝えしよう。

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パパとママの子供だから、自分たちで育てます

フランスの子供たちが抱く両親の寝室への憧れは、彼らがこの世に生を受けたときから植えつけられる。産院の新生児室からママに抱えられ、パパが運転する車に乗ってはじめて自分の家の匂いを嗅いだときから、赤ちゃんの全身にそのことが刷り込まれる。

新生児であろうと中学生になっていようと、子供は子供。家族のベースになるのは夫と妻。夫婦という形を約束しあった一対の男女であって、子供からパパやママと呼ばれるためにいるような、夫婦の姿を借りた父親と母親ではない。密着した夫と妻の関係の前では、ときとして子供さえも締めだしを食らうことになる。ある意味では悲哀にも似た、締めだされた子供のぼやきが、家々の子供部屋から聞こえてくる。

夫婦のベッドルームは聖域のようなもの。子供は基本的に立ち入り不可!「パパが出張中はパパとママのベッドで寝てもいい」というルールがある家庭もあるとか Photo by iStock