井上尚弥の父が語った…ドネア戦で見えた、その強さを支えるもの

世界を制するために必要なこと(前篇)
井上 真吾

でもそれは、相手をなめてるとかではないんです。ドネア対策としてやりたいと思っていたことを、全部、練習でやりつくせたという意味です。

実際、1ラウンド目で相手のパンチは全部、見切れてた。だから、2ラウンド目のあのカットがなければ、ほんとに早く終わっていたと思うんです。あのカットで目がぼやけてしまったんで、そうはなりませんでしたけど。

 

「やられないボクシング」のために必要なこと

――たしかに見ている方も、1ラウンド終了時点では、前回同様、早く終わるのではないかと思いました。

ところで、前回のインタヴューの時に、ドネア戦の展望として、真吾さんと尚弥さんが「これが鍵になるね」と、一致したポイントがあるんですというお話がありました。その時には秘密ということでしたが、種明かしをしていただけますか。

真 それは、ジャブです。

別に難しいことじゃなくて。あと、ステップワーク。足とジャブがあったら、倒すことはできないとしても、少なくとも、やられないボクシングはできる。その上で、そのジャブに加えて右なり、返しの左なりも使ってゆく。

もしあの傷がなかったら、早く終わっていたはずなんです。でも実際には、ドネアの左で目が見えにくくなったので、流すラウンドを作った。それでも、なぜポイントを取られなかったかというと、やっぱりジャブのおかげなんです。

そのジャブが、しょぼかったり、いい加減だったりすると、ドネアはどんどん入ってくるのでああいう展開にはならなかった。たとえ流すラウンドでもジャブがよかったから、ドネアは入りたくても入れなかった。

やっぱり、何でもまずジャブなんです。

――ジャブと言っても、尚弥さんのは左ストレートですものね。その強いジャブをまず当てていく?

真 それもですが、相手を入れない、小突くジャブも必要。いろんな種類のジャブの使い分け。それができれば、攻撃もディフェンスも自在にできる。
ドネアとの戦いでも、ショートのジャブを当てていけば、完全に尚の距離がキープできてたはずなんです。そうなると、ドネアは入りたくても入れないから、あとは右でもボディーでも自在に打てた。逆に言えば、そのジャブを見切られたら、次の右も当てられない。

1ラウンドでは、それがもくろみ通りに全部できた。それで2ラウンドもその流れで行こうとしていたのが、あの左フックですべてが変わってしまった。