旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに選書してもらいました。

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未知なる世界が見えれば、
読書は“旅”となる

自分にとっての旅とは何だろうか。ひとことで言えば「知らない世界へ行く」ということになるだろうか。この「知らない世界」には色々なレイヤーがあり、まずは知らない時代に触れる旅がある。

パタゴニア
ブルース・チャトウィン 著 芹沢真理子 訳/河出文庫(2017)
美術品鑑定や記者の仕事をしていた著者が、パタゴニアを旅して綴った20世紀を代表する紀行文学。人類の壮大なる旅の歴史を辿る。

ブルース・チャトウィンの『パタゴニア』は読む度に、どの時代からも隔絶された、この世ならざる世界に僕を誘ってくれる。南の果ての地で、西洋社会の漂流者と土着の民が織りなす物語は、時に白昼夢のように儚く、時に悪夢のような模様を見せる。チャトウィンの奇形の想像力が単なる旅の追体験を超えたファンタジーの世界を描き出す。

辺境メシ ヤバそうだから食べてみた
高野秀行 著/文藝春秋(2018)
辺境探検家が世界の奇食珍食に体当たりで挑むノンフィクションエッセイ。人という動物の雑食さに驚きつつ、地球の広さを実感する。

一方で、今の世界のエクストリームを見せてくれる旅も面白い。高野秀行の『辺境メシ』はアジアや中南米の現地の人ですら嫌厭するトンデモ料理を食べまくる愉快な食紀行だ。極限の食体験を実にあっけらかんと渡り歩く探検家の姿がたくましく、かつ可笑しい。最も日常的な行為である食が、未知の世界へと続くドアであることに気づかせてくれる一冊だ。

土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて
藤井一至 著/光文社新書(2018)
土研究の第一人者である著者が、言葉通り地面に這いつくばって地球の土を調べ尽くす。自分の足元への興味が広がってゆく冒険の書。

最後は、人間とは違う解像度で世界を見る旅だ。藤井一至の『土 地球最後のナゾ』は、地球に存在する12種類の土を求めて、近所の庭からアラスカの不毛の凍土までスコップ片手に出かける旅の記録。そもそも土とは何か? 豊かな土と痩せた土はどう違うのか? 身近な存在である土の奥深さと偉大さがわかり、自分がミミズになって地面に潜っていくような感覚になれる良書だ。イマジネーションと五感を使って、未知の世界へ旅しよう。

PROFILE

小倉ヒラク Hiraku Ogura
発酵デザイナー。見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにすることを目指し活動。近著に『日本発酵紀行』がある。

           
●情報は、2019年11月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida