天才・松本人志の「限界と今後」日本人の笑いにもたらした功罪

彼が日本の「笑いのお手本」となった理由

なぜ松本人志は敬われ、叩かれるのか

令和最初のM-1グランプリを制したのはミルクボーイだった。優勝者が世間の注目を集めることはもちろんだが、毎年、熱心なお笑いファンや芸人たちが気にしているのはそれだけではない。

審査員である松本人志が誰に何点入れ、どんな評価をしたのか──。なぜなら、松本は「全芸人がリスペクトする漫才界のレジェンド」だからだ。このキャッチコピーは、2019年、同番組にて松本が登場する際に用いられた。

 

松本は、デビュー以来第一線で活躍を続け、50代半ばとなったいまでも、新しいことに果敢に挑戦する。2019年に起きた吉本興業の闇営業問題で「松本 動きます」とツイートしたことからも分かる通り、近年ではお笑い界の「後輩思いの兄貴」としての存在感も増してきた。

松本ファンには「熱狂的なお笑い好き」というイメージもあるが、毎年大晦日に放送される『笑ってはいけない』シリーズは、いまや老若男女幅広いファンを獲得し、年忘れ、年越しに欠かせない存在となった。松本の新たな一面が見られるTwitterや、『ワイドナショー』での発言は、いつでもネットニュースの注目の的だ。

だが、その一方で、松本はネット上などで批判され、炎上することも多い。人気があるから注目され叩かれる。有名人であれば当然のことかもしれないが、それだけではないようにも感じる。松本と日本社会の関係を読み解けば、大きな示唆が得られるのではないか──。

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本稿ではそうした仮説に基づき、松本が注目される理由、「アンチ」松本が生まれる理由、さらには松本の功績を整理しながら、その限界と今後について、元芸人、及びコミュニケーション学の研究者としての立場から論じ、日本社会の「笑いの変化」について考察したい。