養老孟司「おもしろい発見」が生まれる、記録のススメ

人生最高の10冊
養老 孟司 プロフィール

何の理由もなく収容所に放り込まれて、毎日のようにまわりの人が殺されていく。なぜ、監督官たちはこのような残忍な仕打ちを平気でできるのか。収容者たちはなぜ死ななければならないのか。ひいては、なぜ人間はこの世界に存在するのか。

極限の状況だからこそ、問いかけは真摯で切実なものにならざるを得ない。その書き手の真摯さ、またそこから生み出された思惟の深さに打たれるんですね。

モモ』は「時間が奪われる」ことをテーマとしたファンタジーです。時間をきっかけにして、本当の豊かさとは何かについて論じている。この本は、今だからこそ響くものがあると思います。

 

今は、「現在」はあっても「未来」がない。半年後までにこの仕事を終わらせるとか、現在の延長線上で先のことをとらえていて、不確かな、だからこそ豊かな「未来」がなくなっているんです。

特に子どもへの影響は大きい。いい学校に行くために予定をぎっちり決めるとか、これからの豊富な「不確かさ」こそが子どもにとって最大の財産なのに、それが奪われている。

本作では、奪われた時間を取り戻すのがモモという大人の論理に染まっていない少女なんですが、そのことも象徴的だと思います。

本は、机に向かってではなく、電車での移動中とか、暇つぶしに読みます。ただ、これまでずっとそばにいたという意味では、やはり私の人生のかけがえのない友ですね。(取材・文/若林良)

▼最近読んだ一冊

「私が若かった頃とは違い、膨大な情報に容易に触れられるようになった現在、若い才能はどのような“知”を産み出すのか。本作はその最先端に触れられたようで、大きな衝撃を受けました。今後の著作にも注目です」