養老孟司「おもしろい発見」が生まれる、記録のススメ

人生最高の10冊
養老 孟司 プロフィール

欧米圏では、より記録が重視されます。それは民族というより言語の問題ですけど、この本には「記録」の面白さがたくさんあります。

ファーブル自身もまさに「記録」の人で、一日中、畑のわきでずっとハチを見ている。朝、近所のおばさんたちがそばを通って、夕方に戻ってきてもまだ見ていて、笑われたりもする。そんなファーブルだからこそ発見できたものの大きさを実感します。

脳みそが騙される

脳のなかの幽霊』は脳の仕組みや働きについて探求する一冊です。ひとつには幻肢痛です。たとえば、事故や戦争でなくした手の「痛み」を訴える患者さんがいます。問題は脳にあります。

実際に手がなくなっていても、脳のデータには手が残っていて、混乱が起こる。脳は面白いことに、自分の具合がおかしいという信号を出せず、なくなったはずの手が「痛い」という信号を出すんです。

 

では、治療のためにはどうすればいいか。この本で書かれているのは、患者さんの残っている手を、ある箱に入れて動かしてもらう方法です。

中に鏡があって、手がふたつあるように見える。つまり、両手があって動いているように見えるのですが、脳はこれで安心し、不調がおさまるのです。単純なようで意外な発見が、この本にはたくさん詰まっています。

夜と霧』は精神科医のフランクルが、自らのナチス強制収容所体験を綴った一冊です。文字通り、想像を絶する体験でした。フランクルは奥さんや子ども、両親を失い、また自身もいつ死んでもおかしくないような状況にさらされます。

しかし、『夜と霧』は単に戦争の悲劇について語る作品ではありません。人間そのものについての思索を巡らせる作品なんです。