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養老孟司「おもしろい発見」が生まれる、記録のススメ

人生最高の10冊

飼い犬のごまかし

まず、動物を題材にした面白い本ということで、『人イヌにあう』を紹介します。

著者のローレンツは「動物行動学」という動物の行動を研究する学問を切り開いた人物で、ノーベル生理学医学賞も受賞しています。これは研究書ではなく、身近な犬を題材にしたエッセイですが、さすがの観察眼というか、面白い発見がたくさんあるのです。

ローレンツの飼っている犬が、彼が帰ってきたら変なやつが侵入してきたと吠え出した。少し近づいたら、主人だと気づいて、今度は全然関係ない方向に吠えた。つまり、別な人に吠えていたんだという、ごまかしをしているわけです。犬にもこんな側面があるんだと、笑いながらその内容の豊かさに驚かされます。

 

ファーブル昆虫記』は言わずと知れた虫の観察記録です。まず、単純な虫の習性に魅了されます。ひとつはタマオシコガネ。糞を丸めるという習性があるんですけど、そのきれいな丸さにびっくりします。ほとんど芸術に近い。そういった驚きには事欠きません。

「記録する」ことの重要性も痛感させられます。日本人はよく日記や手記を書きます。たとえば戦争で、兵士の遺体から日々を綴ったメモが出てきたりもする。ただ、「記録する」ことは、日本人はうまくない。事実の記述よりも、まず感想が先に来るんです。