写真:池野花(本文内も)

著者に代わって本を書く、ブックライターという仕事をご存じか?

渋谷で働く書店員が驚きのフェアを企画
渋谷文化圏を象徴する大型書店、「MARUZEN&ジュンク堂」(東急百貨店本店内)の一角で、「ブックライター 上阪徹ブックフェア」が開催されている(2020年1月31日まで)。
「ブックライター」という職業名を初めて知った人が多いことだと思う。ブックライターとは、著名人や固有のコンテンツをもった人を取材し、それら著者に代わって書籍の執筆をおこなうライターのことだ。本ができるまでの過程では非常に重要な役割を果たしていて、出版界では欠かせない存在なのだが、表紙に名前が出ないし、書誌データにも登録されないので、一般読者の目に名前が触れることはない。だから、一人のブックライターが書いた本をおよそ30冊も集めたフェアがここまで堂々と開催されるのは初のことで、じつは業界にとって大変衝撃的な「あり得ない」出来事なのだ。上阪氏は自著もたくさん出版しているため、フェアのコーナーは上阪徹著の本と、上阪氏が執筆を代行した著者の本が入り交じる、不思議と言えば不思議な光景になった。
こんな素敵な大事件を、いともさり気なく起こしたのはどんな人なのだろう? その企画者であるMARUZEN&ジュンク堂渋谷店の中田英志郎氏を上阪氏が訪ねて実現した対談をお届けする。

書店もブックライターも、黒子の仕事という意味では共通

上阪:自分の本とブックライティングした本だけを集めて販売できたら面白いなと前々から思っていたので、こういう形でそれが実現して、本当にうれしいですね。中田さんが読まれた私の本のなかでは、どれが一番印象に残っていますか?

中田:『職業、ブックライター。』(2013年11月、講談社刊、ただし現在は電子書籍のみ。「ブックライター」という職業の存在を、自らの事例を紹介して初めて世に出した本)ですね。それまでは著者の代作をするライターさんにはゴーストライターというイメージがありましたが、まったく印象が変わりました。

 

上阪:この本は、書店さんがとても応援してくれました。発行部数が多かったわけではないのに、平積みにしてくれた書店もたくさんありました。書店さんとブックライターには、黒子の仕事という共通点があるのだと思います。出版業界の中で本を販売するプロセスはとても重要だけど、スポットライトが当たりにくい。同じように黒子であるブックライターが表舞台に出てきて書いた本なので、「この本を世に送り出したい」と思ってもらえたのでしょう。

『職業、ブックライター。』刊行当時、このような大展開をしてくれた書店さんもありました。

中田:出版関係者が応援したくなる本でしたね。とくに、この本で語られている「相場観」が印象的でした。