1月16日 英の生理学者がセクレチンを発見(1902年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

英国の生理学者W・M・ベイリス(William Maddock Bayliss、1860‐1924)とE・H・スターリング(Ernest Henry Starling、1866‐1927)が、1902年のこの日、後に消化管ホルモンに分類される物質セクレチンを発見しました。

【写真】ベイリスとスターリング
  ベイリス(左)とスターリング photos by public domain(l), gettyimages(r)

セクレチンは、十二指腸(とくに上部)粘膜に放出されるホルモンで、アルカリ性の十二指腸内腔に胃酸が混合された食物が入ってきてpHが低下すると、それを感知して放出されます。セクレチンの標的器官は膵臓の外分泌系で、これによって膵臓は膵液を分泌します。十二指腸内腔のpHが中和されると分泌が低下します。

【イラスト】胃、十二指腸、膵臓とその周辺臓器
  胃、十二指腸と膵臓。セクレチンの分泌は内容物の流動と連動していた illustration by gettyimages(text by Bluebacks)

すでにこの時代、胃から十二指腸に食物が送られるとすぐに膵液が分泌されること、十二指腸内腔に塩酸を入れると膵臓からの膵液分泌が誘導されるけれど、血液に塩酸を注射してもそうならないことがわかっており、条件反射を発見したI・パブロフ(Ivan Petrovich Pavlov、1849-1936)は、これを神経の働きと考えていました。

〈関連の日〉9月26日 生理学者I・P・パブロフが生まれる(1849年)

ベイリスとスターリングは、十二指腸の神経を切断して同様の実験をしたところ、変わらずにその反応が見られたため、神経によってコントロールされているとするパブロフ説を誤りだと考えます。

次に腸粘膜のサンプルを塩酸を含んだ砂ですり潰し、濾過した抽出物を血液中に注射したところ、大量の膵臓からの分泌が見られました。どうやら、膵液の分泌を調整しているのは、粘膜で作られている「何か」であり、それが血液を介してコントロールしているようです。

2人は、この十二指腸で作られる「何か」をセクレチンと名付けました。

【画像】ベイリスとスターリングの論文
  ベイリスとスターリングの論文。実験した1月6日の日付が見える (J Physiol. 28(5): 325–353. 1902)

スターリングらは、セレクチンのように離れたところにある特定の組織や器官へ血液で運ばれ、微量で変化を生じさせる物質を「ホルモン」と名付けました。ベイリスとスターリングは当初「化学的伝令」と呼んでいましたが、スターリングが友人であるギリシャ研究で有名な古典学者に教えられた、「刺激する」「興奮させる」の意を持つ古代ギリシア語orumaoをもとに命名し、1905年の講演ではじめて使いました。

ホルモンの発見を皮切りに、その後、生理学は著しく進歩することになります。やがて、カナダの生理学者フレデリック・バンティング(Frederick Grant Banting、1891-1941)のインスリン発見によって、多くの糖尿病患者の命を救うことにつながっていきます。

また、現在では、セクレチンが十二指腸陰窩に散在するS細胞(セクレチン細胞)から分泌され、肝臓の胆汁分泌促進や、胃の胃酸分泌抑制の働きがあることがわかっています。消化管ホルモンにも、胃や腸で分泌され消化管の蠕動運動を促すセロトニン(脳内では神経伝達物質として働く)や、胃で分泌されるガストリンなどが知らています。