シングルマザー家庭の貧困率は50%で、38%が貯蓄ゼロだという。そういう状況を見て、たとえ酷い環境下でも「離婚できない」と言う専業主婦は多い。今回、長く離婚の現場を取材し続けてきた上條まゆみさんが出会ったのは、さほど高学歴でもなく、手に職もなく、近くに実家もなく、実家もとくに裕福ではないひとりの女性。彼女はコツコツと準備をし、困難な状況から脱出するための計画を練ったのだという。

いったいなぜ専業主婦が離婚を決意したのか。そしてどうやって実現させたのか。

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おとなしくてやさしい夫

結婚・出産で家庭に入り、夫の庇護のもとで生活をする。それは、夫が舵をとる小舟に、救命具もつけずに乗り込むようなものだ。それが、いまにも沈みそうな泥舟だったらどうするか。泥舟と運命をともにするのか、それとも思い切って海にドボンと飛び込むか。山野えみ子さん(仮名・45歳)は、海に飛び込む道を選んだ。しっかりと準備をしたうえで、2人の子どもの手を引いて。――えみ子さんは38 歳のとき、11歳の息子と6歳の娘を連れて離婚した。

えみ子さんは、色白でおっとりとした雰囲気の女性だ。鮮やかなピンクのセーターがよく似合う。そんなえみ子さんが結婚したのは25歳で、相手は5つ年上のサラリーマン。友だちの主宰する飲み会で知り合った。

「おとなしくてやさしい人だという印象。背も高かった。1年半ほど交際しましたが、埼玉と群馬で少し離れていたので、週に1回会えるかどうか。いま振り返れば、あまりお互いのことを知らずに結婚してしまったなーと思います」

専業主婦になってから
露呈し始めた「悪癖」の数々

えみ子さんは、結婚後はパートで販売の仕事をしていたが、2年ほど経ったところで妊娠し、出血があるなど経過に不安があったことから退職。家庭に入る道を選んだ。元夫はそこそこ大きな企業に勤めていたため、専業主婦になることに不安はなかった。

しかし、そのあたりから、元夫の悪癖が露呈し始めた。

女遊びが激しくて。女性からメールが入って、そのポップアップがたまたま目に入ったりで、見つかるんですよね。私が怒ると『もうしない』って謝るんだけど、すぐにまたやる。でも、子どももできたことだし、私が我慢すればいいのかな、とその都度、許してきたんです」

女性からのメールも無防備ですぐにみつかった Photo by iStock

下の子が生まれて半年ほど経ったある日、洗濯物を干していて、ジーンズの後ろのポケットから紙がひらひら、と。見れば、なんと100万円もの借金の取引明細書だった。えみ子さんは驚愕。夜勤で昼間寝ていた元夫を叩き起こして、「これ、なんなの」と問い質した。

「寝ぼけていたから、うまい言い訳ができないわけですよ(笑)。結局、それはパチンコでつくった借金で、そのほかにも自分の両親や当時交際していた女性やいろんな人からお金を借りていて、総額400〜500万円もの債務があることがわかりました」