「あまり効かない」インフルエンザ接種、でも接種すべき3つの理由

「嫌ワクチン論」に騙されてはいけない
宮坂 昌之 プロフィール

ということは、その後どのようなタイプのウイルスでインフルエンザ感染が起きても、常にこの領域に対する抗体が優先してできることになり、すべてのタイプのインフルエンザウイルスに効果を示すワクチン、すなわち「ユニバーサルワクチン」ができることになります。アメリカではHA頸部に対するワクチンが試験的に作られ、既に臨床治験が始まっています。

副作用リスクはあるけど、感染はもっと怖い

次に、副作用についてです。「ワクチンは劇薬である」として毛嫌いする近藤誠氏の『ワクチン副作用の恐怖』という本があります。そこには「インフルエンザワクチンは、ただの風邪を予防するために打つには危険すぎ、無用です」とあります。

しかし、インフルエンザは「ただの風邪」ではありません。

インフルエンザ感染により、脳症が起こることがあります。そして、インフルエンザ感染により脳症が起こると、3割程度の患者が重い後遺症を残し、1割弱の患者が死亡します。

ワクチン接種により脳症が起こることもありますが、その頻度は100万回の接種に対して1回以下と低く、一方、インフルエンザ感染による脳症の発症頻度はもっとずっと高いのです。

したがって、ワクチンにある程度のリスクがあることは事実であるものの、単にその副反応を恐れるよりは、インフルエンザという病気自体の怖さを正しく理解することのほうが重要であると考えます。

「嫌ワクチン論」に惑わされないで

インフルエンザワクチンはあまり効果が強くないことは確かです。個人のレベルでは「効いた」という実感はあまり得られない、というのが実情だと思います。しかし、国全体となると、インフルエンザ感染による死亡者数は確実に減少させることができます。

また、ワクチンの副反応には重篤なものは少なく、むしろインフルエンザ感染によって起きてくる合併症のほうが頻度的に大きく、いったん起こると大変です。

 

特に、「ハイリスク群」である65歳以上の高齢者、乳幼児、妊婦、年齢を問わず呼吸器系や循環器系に慢性疾患がある人、糖尿病や慢性腎障害のある人や免疫低下状態の人は、強い肺炎、気管支炎などの重篤な合併症を起こす可能性が高くなります。

したがって、現在のインフルエンザワクチンの「効き」はあまり良くないものの、「ハイリスク群」の人たちにはワクチン接種が強く勧められます。

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私から見ると、他に良いチョイスはないように思います。近藤氏の「インフルエンザワクチンは、ただの風邪を予防するために打つには危険すぎ、無用です」というのは、あまりに乱暴な言い方であり、誤りです。

それから、ふだんお元気な方々は「嫌ワクチン論」に惑わされずに、ワクチンのメリットとデメリットを考慮されて、ワクチン接種をするかどうか、ご自分でお決めいただければよいと思います。

【「インフルエンザワクチンを接種すべき3つの理由」まとめ】

1 インフルエンザワクチンはあまり効果が高くないものの、国全体としては死亡者数を確実に減らすことができる。

2 ワクチンによる副反応はきわめて稀であり、むしろインフルエンザ感染による合併症のほうがずっと怖い。

3 特に、65才以上の高齢者、乳幼児、妊婦やすでに慢性疾患を持っている人たちでは、インフルエンザにより重い合併症を起こす可能性がある。