「あまり効かない」インフルエンザ接種、でも接種すべき3つの理由

「嫌ワクチン論」に騙されてはいけない
宮坂 昌之 プロフィール

では、これを母集団1000万人で考えてみるとどうでしょうか。100万人の患者が発生するはずが、ワクチン接種率が100%になると、これが50万人に減る、ということになります。

ということは、日本の総人口(約1億2000万人)のレベルで考えると、たとえワクチンの有効率が50%としても、かなりの効果があるということになります(この議論は神奈川県のけいゆう病院・菅谷憲夫先生のご意見を参考にしています)。

つまり、インフルエンザワクチンは、個人としては効果を実感しにくいものの、国民全体で考えると、実際には一定の効果がある、と解釈してよいでしょう。

インフルエンザワクチンの効果が低いワケ

しかし、一方で、他のワクチンに比べてインフルエンザワクチンは効果が弱く、長続きしないことは大いに気になるところです。ワクチン効果が弱いのは「ウイルスの抗原性がひんぱんに変化し、この変化を正確に予測することができないこと」などが原因としてあげられていますが、他にもいくつか理由があるようです。

 

その一つは、今のワクチンが鶏卵で作られていることにあります。

ウイルスが鶏卵中で増殖するうちに変異して、鶏卵で増えやすいウイルスが選ばれ、その結果、実際に流行しているウイルスとは微妙に違うものに変化してしまうのです。そのようなウイルスからワクチンを作れば、型が完全にはあっていないのですから、当然、効きの悪いものになります。

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また、鶏卵を用いたワクチン作製は、大量の鶏卵を必要とし、高価で時間もかかります。なので、最近は、ウイルス変異が起こりにくい培養細胞を用いた新しい作成法が開発されつつあります。

もう一つ、ワクチン効果が低い理由は、インフルエンザウイルスでは、「抗原原罪(original antigenic sin)」とよばれる現象があるためといわれています。

この「抗原原罪」は、ワクチンの効果を考えるうえでとても大事な概念なので、少し丁寧に説明しましょう。

抗体生成が鈍くなる「原罪」

まず、「原罪(original sin)」とは、その昔、アダムとイブが神様の意に反して禁断の実を食べたために人類は生まれながらにしてこの罪を負っているというキリスト教の考え方です。

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これをインフルエンザの話で考えてみます。たとえば、XとYという2種類のお互いによく似たインフルエンザウイルスが存在したとします。ウイルスXに感染すると(あるいはXに対するワクチンを作って接種すると)、感染者(あるいはワクチン被接種者)は、通常、ウイルスXに対して抗体を作ります。

ところが、Xに対する抗体が作られているなかで、新たにYという、似ているけれども別のインフルエンザウイルスに感染すると(あるいはYに対するワクチンを接種すると)、この人は前のウイルスXに対しては普通に抗体を作り続けるものの、新しいウイルスYに対しては抗体を少ししか作ることができなくなるのです。