2020.01.01

意外!「初もうで」は日本古来の伝統、などでは全くなかった

昭和のブームに流され続ける日本人
島田 裕巳 プロフィール

「ゆく年くる年」の創生

初詣のはじまりについては、新刊の『神社で拍手を打つな!』(中公新書ラクレ)で述べているので、詳しくはそちらを見ていただきたいが、高浜虚子の句を見ると、そのあたりの事情がよく分かる。

虚子は正岡子規に師事した著名な俳人で、1894年から1935年までに作った俳句を『五百句』という本にまとめている。

そのなかで最初に初詣が季語として使われているのは、昭和10年元旦の「神近き大提灯や初詣」の句である。

 

これは明治神宮で詠まれたもので、虚子は元旦の午後には鎌倉の鶴岡八幡宮にも初詣し、「神慮今鳩をたたしむ初詣」の句を詠んでいる。

もちろん、虚子が初詣の先駆者というわけではないが、他の証拠からも、初詣の慣習が昭和初期に生まれたことが分かる。

これに関連するが、除夜の鐘の慣習も初詣と同じ時期に生まれている。これも、『神社で拍手を打つな!』で述べた。

江戸時代には、すでに「除夜の鐘」は俳句に詠まれていた。けれども、除夜の鐘を撞くのは一部の禅宗の寺に限られ、全体には広まっていなかった。

除夜の鐘が広まったのは、昭和2年からはじまるNHKのラジオ番組「除夜の鐘」を通してだった。この番組は、現在も放送される「ゆく年くる年」の前身である。「ゆく年くる年」の番組に除夜の鐘が欠かせないのも、こうした由来があるからである。

大晦日に除夜の鐘を聞き、それにつられて初詣に出かける。そうした慣習は昭和初期に生まれたのである。

関連記事