元経済ヤクザが指摘「株式相場の支配者・AIの弱点」

「時間」こそヒトが「神」を倒す鍵
猫組長(菅原潮) プロフィール

伝統的な炊飯方法を堅持するプロの料理人からは非難されそうな炊き方だが、周君は「日本の科学技術は素晴らしい。なのになぜ炊飯方法は江戸時代から進化させないのですか? これは科学です。否定する人は宗教的な炊飯方法が好きなのです」と、胸をはる。

だが、私は、周君の言葉に対する違和感にしばらく悩むこととなった。

事象に内包される多様な要素を「捨象」することが「近代科学」の「合理的」手法だ。食味や粒の大きさなど多様な要素を「捨象」し「糖化」を選び、その「再現性」を生み出した周君のアプローチはまさに「科学的」で「合理的」と言えるだろう。

だが、最新の研究によれば、日本人は約2800年前から稲作を行ってきた歴史がある。そこで培われた「伝統」を「宗教的」と切り捨ててよいものだろうかと……。

私が周君の言葉に感じた「違和感」は、「歴史」という価値の欠落にあった。すなわち「時間」の概念だ。得た端緒はAIを知るにつれ、新たな発見となっていく。こうして私のAI開発プロジェクト「ニャンハッタン計画」も、思わぬ福音をもたらすこととなった。

 

AIは浄水場にビルを建てない

AIは、自身で学習してそのデータを合理的に分析して「解答」を導き出すことができる。「解」が間違っていれば、それを「学習」し、新たな「合理的最適解」を導き出す。これを「ディープラーニング」という。

ディープラーニングはグーグル傘下のIT企業、ディープマインド社の開発した囲碁対局プログラム「AlphaGo」(アルファ碁)で一躍有名になった。

AlphaGoは2015年に初めてプロ囲碁棋士に勝ち、4代目の「Zero」にアップデートして以降、人間が勝つことは不可能となった。「Zero」の特徴は、対局データを与えられず自己対局によって学習した点で、人間の脳を模した「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN)と確率論がキモとなっている。

簡単に説明すれば、「CNN」は「捨象」をするアルゴリズムだ。スマホで写真を撮ると「顔」を認識して追いかけるが、画像全体の中から余計な要素を「捨象」して「顔」を特定するのは「CNN」の得意とするところだ。

「Zero」は盤面の上の余分な情報を「捨象」し、選び出された局面から「確率論」によって「合理的最適解」を導き出す。株投資に使われる「AIアルゴリズム」もこの延長上にあり、多くの要素を「捨象」して、株価を上下させる「要因」を選び、確率論によって「最適解」を導き出すのだ。

一見人間が行っている「科学的思考」と同じように見えるだろう。だが果たしてそうか。決定的な差は「時間」の概念だと私は考えている。

このような思考プロセスで「AI」が導き出す「最適解」は、ミリ秒単位の「捨象」と「確率計算」の積み重ねよるものだ。AIによる「推測」というのも、「ミリ秒単位」の「捨象」と「確率計算」の積み重ねに過ぎない。

「ヒト」の思考を模しながら「ヒト」よりはるかに速い速度で「合理的解」を積み上げるAIによって、投資家は「ミリ秒先」の未来を手に入れ、1秒の中で投資を行うことができるようになった。その恩恵が莫大であることは言うまでもない。