電撃退任の日産・関副COOが語った「日本電産社長に移る理由」

「トロイカ体制」はいかにして崩れたか
井上 久男 プロフィール

日本電産のラブコールのワケは?

2019年3月期決算で日本電産の売上高は1兆5183億円で営業利益は1386億円。営業利益率は9・1%。これに対し、日産の売上高は日本電産の10倍以上ある11兆5742億円で営業利益は3182億円。営業利益率は2・7%。

企業価値を示す指標の一つである株価の時価総額(12月24日現在)は日本電産の4兆5034億円に対して、日産は2兆7586億円。売上高が10倍以上もあるのに、日産の時価総額は日本電産の6割程度に過ぎない。

 

時価総額には企業の勢いや将来性も反映される。日産は収益源の米国事業の苦戦や、カルロス・ゴーン前会長時代の無謀な拡大戦略による負の遺産の処理によって当面は業績の大きな回復は見込めない。一方日本電産は20年度中に売上高2兆円を目指すと発表している。

日本電産はこれまで精密小型モーターを中心に事業を展開してきたが、今後は電気自動車(EV)向けモーターなど車載ビジネスを成長戦略の柱の一つにしている。日本電産の将来性も、関氏が転職を判断した理由の一つだろう。

なかでも日本電産は、モーターとそれを制御する半導体、ギアが一体となったEVの心臓部「トラクションモータ」に力を入れる。中国浙江省平湖に今春、新工場を稼働させ、さらに増設も予定している。新工場のアルミ鋳造ラインには、日本の生産ラインではあまりみられないような珍しい最新鋭の「バリ取りロボット」なども導入されている。「バリ」とは鋳造工程で製品にできる金型の跡などの突起物のことだ。

EV向け「トラクションモーター」を増産するために中国浙江省平湖で新工場の建設 に取り掛かる日本電産トーソク(2019年3月、筆者撮影)

日本電産がこれから事業規模を拡大していくには、「生産力」がカギとなる。安定した品質の製品を大量にスムーズに造る力だ。関氏は日産ではエンジンなどパワートレイン分野の生産技術、すなわち工場でのライン構築の経験が豊富だ。こうした関氏の専門能力も日本電産側は評価したと見られる。

また、日本電産の現社長の吉本浩之氏、副社長の佐藤明氏も日産OB。EVのモーターを手掛ける子会社、日本電産トーソクは、かつて日産グループだったトーソクを日本電産が1997年に買収してできた企業だ。日本電産は日産とつながりが深い点も、関氏の転職を後押しした模様だ。