米製薬ベンチャー開発者が明かす 日本人が「海外で活躍できる理由」

リケジョだって活躍できる!
中鉢 知子 プロフィール

日本で臨床試験を実施する際はとくに、その領域の専門家の先生方はみな「アドバイザー」として私たちより一段高い扱いがなされていて、相談したいことがあっても営業担当者を通してアポをとるような形になってしまうのですが、アメリカを含めた諸外国ではそんな煩雑な手続きは必要なく、専門家契約した後は電話などで気軽に話すことができます。

 

何より、私も医師の資格を持っているので、「この人は開発のエキスパートの医師である」と認めてくれて対等の立場で話してくださるのがいいですね。私が治験の説明のために病院を訪れると院内の見学までさせてもらえることもありました。

医学研究者との付き合い方が日米では違う

──なるほど、医師の資格を持つ人が企業で臨床開発に関わるのは大きなメリットがあることがよくわかりました。ひるがえって日本ではなぜ医学部出身の人が製薬会社で開発に関わらないのか、とても不思議です。

これは日本に限ったことではないのですが、そもそも医師の皆さんは「医療の専門家」としてトレーニングを受けているためにチームワークで仕事をすることに慣れていません。

医師はチームワークに慣れていない Photo by iStock
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臨床試験は医者が一人いれば実施できるものではなく薬事や統計の専門家を含めて多くの方々が関わる仕事なのですから、リーダーとしてチームをまとめるだけでなく、わからないことがあればその分野の担当者に聞きに行くような「学ぶ姿勢」がないと務まらないのですが、これができない医者が多いのだと思います。臨床試験の企画・実施にあたってのルールを記載した社内SOP(手順書)の遵守が求められるのも苦手なようですね。

これにくわえて、日本特有の事情としては「製薬会社と共同で研究する」ということに馴染みがないということもあると思います。

日本の医師にとっては製薬会社との関わりといえばもっぱら営業担当者を通してのみですし、そもそも私が学生時代の医学部の教育カリキュラムには「臨床開発」がありませんでした。こんな状態ですので医者として得た知識がそのまま医薬品の開発に使えるというわけではないのですね。

今の医学部でのカリキュラムはどうなっているかよく知らないのですが、授業の一環として「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」など一流の英字論文誌を読み込んで臨床試験のことを勉強する機会があってもいいのではないかと思っています。

ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン Photo by Getty Images
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──日本で仕事をする身として何とも耳の痛い話です。逆に日本のほうがいいと思うところはありますか?

データの信頼性を含めた臨床試験全体のクオリティですね。とにかくデータがきれいです。もっともクオリティを追求しすぎるあまりに開発にお金がかかりすぎるという欠点もありますが。あとタイムラインの重視。

──鎌谷が専門の原薬製造でもそうなのですが、やはり納期を必ず守るのは日本人の美点ですか?

そうそう。東京で仕事をしていた折、統計担当の方に「この日までにレポートをください」とお願いしたらその日の午後11時57分に送ってきてくれたことがありました。私も会社でそれを待っていました。アメリカでは考えられないです(爆笑)。

医薬品業界のベンチャーで働く

──ところで、アメリカの大手製薬会社に勤められた後、今はベンチャー企業で働いておられると聞き、驚きました。

従業員約40人の会社で、現在は皮膚疾患のための塗り薬を開発しています。人員の半分以上は薬の製造方法を研究している人たちで、臨床開発に携わっているのは10人くらいです。

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