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NASA・ジェット推進研究所が語る「宇宙開発とクラウド」の未来

3つの脳を備えたマシンで宇宙探査!?
私たちの生活にもすっかりおなじみの概念になった「クラウドコンピューティング」。
しかし、最先端のクラウド技術が見据えているのは「宇宙」! あの「ボイジャー1号」も、クラウド技術を使って生まれ変わろうとしています。

最新刊『デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか』が話題の西田宗千佳さんによる、NASAジェット推進研究所(JPL)の技術責任者への単独インタビュー録!

1970年代のロケットにもネットワーク技術が

宇宙開発といえば、我々の生活からは遠く、最新の技術が湯水のごとく投下される世界、というイメージが強い。

だが、そんなジャンルにおいても、「新技術への移行」は大きな課題となっている。現在の宇宙産業は変革期にあり、新しいネットワーク技術の活用も、それを後押しする要素の一つだ。

一方で、1970年代につくられた宇宙機が、今なお“現役”として宇宙空間を航行しており、それらの技術を捨て去ることもできない。

宇宙産業と新しいネットワーク技術は、どのような関係にあるのだろうか?

筆者は、12月2日から6日まで米国・ラスベガスで開催された、アマゾン ウェブ サービスの年次開発者会議「re:Invent 2019」で、NASA ジェット推進研究所(JPL)のチーフ・テクノロジー&イノベーションオフィサーであるトーマス・ソルダーストーム氏に単独インタビューした。

トーマス・ソルダーストーム氏

その内容をリポートしよう。

無人宇宙探査機にクラウドを活用

JPLは、NASAのなかでも、無人探査機や衛星を中心とした、いわゆる「有人計画」以外を担当することの多い研究所だ。太陽系内の惑星探査機などの開発・運用に携わっているが、地球軌道よりもずっと遠い場所へ飛んでいく宇宙機を担当するケースが多いため、無人機を扱う場合が多い。

JPLのような組織は当然、コンピュータなしには機能しない。

そして、JPLで使われるコンピュータはじつに多彩だ。MacやWindowsのようないわゆる「パソコン」もあれば、大規模なシステムのためのデータセンターもある。

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そうしたものをJPLは、可能なかぎりクラウドを併用したものへと移行させようとしている。なぜか?

「そのほうが、コストを削減できるからです。クラウドにすれば、必要なときに必要な計算能力を借りて使うことができます。計画にもとづいて、それに必要なぶんを借りて使うのですが、計画の見直しに合わせて、利用量を増やすことも減らすこともできます。

減らせば、そのぶんを他のプロジェクトに回すこともできる。柔軟性が高くなるメリットがあるのです」

ソルダーストーム氏はこう答える。

「目に見えない」Amazonを活用せよ

これは、一般的なクラウド活用の考え方に近い。大学でも企業でも、自社でサーバーなどの設備を抱えるのではなく、必要なときに必要なリソースを、AWSのようなクラウドインフラ事業者に借りたほうが柔軟性は高いからだ。

 

ちなみに、「AWS」は、「Amazon Web Service」という名のAmazonの子会社だ。この連載の以前の記事では、「目に見えない」Amazonとして紹介した。

「目に見えない」とはどういうことか?