Photo by gettyimages

またトランプのウソか…米中「第1段階の合意」が夢物語と言えるワケ

いつ反故にされてもおかしくない

燃え盛る一方の貿易戦争について、米中両国は12月13日、「第1段階の合意」に達し、中国が農産品やサービスなど米国からの輸入を今後2年間で計2000億ドル(約22兆円)増やすことなどと引き換えに、米国は制裁関税第4弾の発動を見合わせ、すでに課している関税の引き下げに応じることに合意したと発表した。

これを受けて、世界の株式市場では先週、先行きへの楽観ムードが広がり、各地の株価指数が高値を更新する展開になった。

しかし、本当に、「第1段階の合意」を転機として、米中貿易戦争は収束に向かい、吹き荒れた保護貿易主義の嵐が収まるのだろうか。今週は、その謎に迫ってみたい。

Photo by iStock

すでに意見が食い違う

報道によると、USTR(米通商代表部)などの米政府高官が明らかにした合意内容は、米国の対中貿易赤字の削減策として、中国が農産品、工業品、エネルギー、サービスの4分野の輸入を今後2年間で合計2000億ドル増やすことを約したというものだ。特に、農産品については貿易戦争が始まる前の2倍超の水準となる年400億~500億ドルに引き上げるという。

また、知的財産権の保護や金融サービス市場の開放に加えて、外国企業に対する技術移転の強要をやめることにも、貿易協定として初めて合意したとしている。さらに、中国が競争的な通貨切り下げを自制し、通貨政策の透明性を高める為替条項も採り入れたという。

 

このほか、合意の履行状況を監視する機関を設け、違反が疑われる場合は事務方で協議し、閣僚級でも解決できない場合は追加関税を含む措置をとることになったという。

今後、合意文書の詳細を詰めて、来年1月の第1週に閣僚級がワシントンで署名する予定だと米国側は説明している。

こうした合意と引き換えに、米国は今年9月に1200億ドル分の輸入品に発動した15%の制裁関税を7.5%に引き下げる方針で、合意文書の署名から30日後に実施すると表明。さらに、USTRは12月13日、中国との合意を受けて、同15日に予定していたスマートフォンなど1600億ドル分の中国製品に対する制裁関税「第4弾」の全面発動を無期限で延期すると正式に通知したという。

ところが、米国側の発表と、中国国務院が13日夜、北京で開いた記者会見の内容を比べると、少なからぬ食い違いがある。

 

例えば、関税。中国が第1弾の合意の成果として「米国は発動済み関税を一部取り消すと約束した」と強調したところ、トランプ大統領はすかさず「関税の大部分は維持される。中国との第2段階の交渉に使うつもりだ」と反論した。

その後、米国は15日に予定していたスマートフォンなどが対象の対中制裁関税「第4弾」の残り1600億ドル分の発動を見送り、9月発動分(1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げる一方で、第1弾から第3弾(2500億ドル分)の25%は維持すると表明した。が、中国は「米国が段階的に取り消すと約束した」と繰り返し主張している。

米国の対中貿易赤字の縮小策についても、温度差が目立つ。米国は農産品や工業製品、サービスなどの購入を中国が2年間で2000億ドル増やすと表明したといい、政府高官が記者団に「農産品の輸入規模は2017年の240億ドルから年400億ドルに拡大する」とブリーフィングしたというが、中国は当初、「具体的な規模は後日発表する」と数値への言及を避けたそうだ。

合意文書への署名時期も、USTRのライトハイザー代表が「1月の第1週を目指す」とする一方、中国は「法律の審査、翻訳などが終わってから決める」と煮え切らない。仮に、米中貿易戦争が本格的な収束に向かうのならば、トランプ氏が強調しているように「第2段階の交渉をすぐに始める」ことになるはずだが、中国はここでも「まずは合意の履行を見極める」と慎重姿勢を崩していない。つまり、合意そのものが合意と言えるレベルのものなのかどうかさえ、今なお不透明と言わざるを得ない状況だ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら