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元農水事務次官長男殺人事件から考える「有名人家族の苦悩」

家族という「呪い」を解くには…

親の社会的立場で人生が決まるのか

12月16日、元農水事務次官の熊沢英昭被告に懲役6年の実刑判決が下った。東大法学部を卒業し、霞が関でも出世コースを歩んでいた男性が晩年、刑務所生活を送るようになるなど誰が予想できたであろうか。

筆者は、加害者家族支援において、犯罪者の親を持つ子どもたちが「犯罪者の子」として差別され、肩身の狭い思いをして生きている事実を目の当たりにしてきた。

一方で、他人から羨ましがられるようなエリートや有名人、経済力のある親を持った子どもたちが必ず幸せになっているかといえばそうとは限らない。

親の影響力は、どこまで子どもの人生を左右してしまうのか。いくつかの事件の背景から考えてみたい。

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北村修(仮名・30代)の父親は、社会的に注目を集める人物だった。それゆえ、修が学校でいじめられることを心配した両親は、私立中学を受験させたが失敗。修は、地元の中学校に通わなければならなくなった。

修は、常に周囲から注目されている緊張感に晒されていたという。「いい人」でいなければならないと、他の人が面倒くさがるような係を積極的に引き受け、周りから一目置かれるように勉強もスポーツも頑張った。

 

優等生である反面、いじめにも加担した。修は自分がいじめの対象となる恐怖から、いじめる側に回ることによって自分を守ろうとしていた。理不尽な緊張感を強いられる日々、いじめは大きなストレス発散になっていたという。

他人の評価ばかり気にしていた十代、自分自身がやりたいことや目標を見つけることはできなかった。就職活動も上手くいかず、結局、親のコネがきく会社に入ることになった。

修は周囲から認められたい一心で懸命に働き業績を上げたが、「親のコネ入社」という陰口が耳に入る度に自尊心を深く傷つけられていた。

社会的に評価されるわけでも、やりがいを感じられるわけでもない職場で募るストレスから、薬物に手を染めるようになっていった。

「逮捕されて、親族から絶縁された瞬間、解放された気がしました。仕事もすべて失いましたが、失ったことでようやく、自分自身の人生が始まった気がします」