20年で市場規模3倍「図鑑」の人気が大復活している理由

2010年代「図鑑戦争」の内幕
飯田 一史 プロフィール

「偏執的」だからこそ売れる

こうして流れを整理して見ると、図鑑市場ではやはり小学館が頭ひとつ抜けて強いという印象を受ける。

「創」2013年5・6月号の「「妖怪ウォッチ」旋風が吹いた小学館の今後」によれば、NEOの成功で、小学館は図鑑市場のシェア45%を占めたという。同じく「創」2019年2月号によれば、マクドナルドのハッピーセットに2018年夏から小学館のミニ図鑑(NEOを再編集したもの)かミニ絵本が選べるようになり、売り切れ続出、NEO本体の購入にもつながっているという。

 

小学館は2012年から刊行している“図鑑のようで図鑑じゃない”学習ビジュアル百科『キッズペディア』シリーズも人気だ。これは「植物と動物はどう違う?」といった“なぜなに”を見開き一テーマで写真やイラストで図解し、答えていくものであり、見せ方は学習雑誌のページづくりに似ている(「創」13年5・6月号、46ページ)。

どうして小学館の図鑑は強いのか? それは、以下のような編集者の偏執的ともいえるものづくりの力が大きいだろう(もちろん、こうしたスタンスでの本作りが許される会社としての環境の力も大きいと思われる)。

〈この図鑑は、小学館の図鑑NEOシリーズの「イモムシとケムシ」(DVD付き、税抜き2千円)。国内の幼虫約1100種を掲載している。従来の一般向けの図鑑の数倍の詳しさで、高価な専門書と同等の充実ぶりだ。ページをめくると、色も形も様々なイモムシやケムシが登場。

6月下旬に発売すると、ネット販売サイトの大手、アマゾンの「図鑑・事典・年鑑」部門で一時売れ筋のトップ10入り。年内には1万部に届きそうな勢いで、同社の図鑑としては「恐竜」「宇宙」といった定番のテーマと肩を並べる異例の売れ行きという。

企画のきっかけは4年前。編集者の広野篤さん(45)が、チョウやガの幼虫の展示会を訪れて思いついた。社内で提案すると、当時の上司は「やるのはいいけど、見たくはない」。それでも、専門家に協力を仰ぎ、自身も3年以上かけて約50種類、数百匹のイモムシやケムシを会社で育てながら作り上げた〉(「朝日新聞」2018年8月10日東京夕刊「イモムシ図鑑、意外な人気 「学術的にも価値」」)

新時代の図鑑は、子どもたちの調べ学習/総合的学習で役立つ情報が満載されているだけでなく、「見せ方」「切り口」という新要素が、子どもたちの学習のアウトプットの参考にもなっている。

「自ら学び自ら考える」とか「知識の活用」といったことが近年、ますます子どもたちに求められるようになっている。独自のテーマを設定し、観る者の興味を惹くためのいわば「お手本」たりえる図鑑が、この10年で求められるようになったと言えるだろう。

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