コンビニの300円が出せない

田村さんは現在、都内の文化施設で案内スタッフとして働いている。派遣社員で時給は1500円。休学が許されるのは2年間だけなので、その間に学費を支払わないとこれまでの苦労が無駄になる。お金をためなければ。洋服はすべて古着。ひどい雨でもバスには乗らない。シャンプーは格安のものでがまんする……。

毎日早朝に起きて昼食用の弁当をつくる。疲れた朝、「たまにはコンビニで買ってすませたい」と思うが、おにぎり2つとお茶で最低でも300円。その300円が出せない

「そういう生活にはもう慣れっこですけど、やっぱり小さなため息がちょくちょく出ます」

コンビニの300円も、大きな支出だ Photo by iStock

不安なのは、この先になにがあるか見通せないことだ。大学を卒業したからと言って、いい仕事が見つかるのか。奨学金の返済もあるし、結婚して子どもを産むなど夢のまた夢だ。
 
努力しても努力しても、貧困から抜け出すには高い壁が立ちはだかっている。肌身にしみて感じていた頃に出会ったのが、山本氏の演説だった。小倉の演説を見たとき、ただの演技かもしれないと思った。ほかの動画や国会での活動も調べ、この人を信じてみようと思った。
 
今夏の参院選で、れいわ新選組は「奨学金チャラ」を主要政策の一つにかかげた。でも、田村さんは自分の奨学金返済を免除してもらうために支持するのではない。山本氏が自分のような境遇の人のために泣いてくれる人だったから、支持するのだという。「一つひとつの政策はうまくいかないときは修正すればいいと思います。人間として共鳴できることが大事です」
 
田村さんには平日の夜、駅ビルに入ったファミレスで食事をしながら話を聞いた。久しぶりの外食だったのかもしれない。メニューを穴の空くほどみつめ、なにを食べるか悩んでいる姿が印象的だった。ぱっと見て彼女を貧困と結びつけるのは難しい。今風のリュックサックにガウチョパンツ。オシャレな若い女性の一人だ。彼女に言われてしまった。「今どきの貧困女子は見かけじゃ分かりませんよ。みんな子どものころから貧困で、お金がなくても工夫して、女の子らしくするテクニックを持っていますから
 
貧困に何度も人生の予定を狂わされながらも、なんとか前を向いて生きようとしている。わたしは田村さんに心からエールを送りたい。

貧困層だけではない。れいわ新選組に投票したのはどのような人たちなのか。そしてその背景はなにか。山本太郎の力と危うさとはなにか。多くの人の声をリアルにきき、エビデンスも含めて熱く冷静に分析した一冊。