母が納期までに学費を払えず……

きょうだいで唯一の大学進学を家族の誰もが喜んでくれたが、問題は「お金」だった。
 
高校の成績がよかったため学費は一部免除になったが、それでも年間約50万円はかかる。キャンパスの近くにアパートを借りる必要もあった。
 
母と話し合った。学費は母が教育ローンを組み、不足分をスーパー勤務の収入から捻出すると言ってくれた。そのかわりアパート代や食費、教材費などは田村さん自身で負担することになった。日本学生支援機構(JASSO)から月6万4千円の奨学金を借り、平日の夜間と週末にアルバイトを入れた。
 
キャンパスライフは悪くなかった。外交官や国際NGOの職員として働く夢があった田村さんは、国際法のゼミに参加し、英語の勉強に身を入れた。

学ぶことで将来を明るいものにしたい。そうして必死に学んでいたが…(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

だが……。
 
順調だった大学生活は3年生の冬に崩れた。
 
母が納期までに学費を払えず、退学になったのだ。ずっと育ててくれた母を責める気はなかった。これからは母を少しも頼らず、自力で学費を稼ごうと決意した。事務系の派遣社員として働き、復学に必要なお金を貯めることにした。 時給は1250円。生活しながら1年分の学費を貯めるのにおよそ1年半かかった。月に1万5千円の奨学金返済を迫られたのも痛かった。
 
ようやく大学へ再入学し、4年生になった。だが、授業と両立させようとすると、思い通りに働くことができなかった。再入学から半年後、また学費が払いきれないことが分かった。大学と交渉してこんどは休学扱いにしてもらった。
 
卒業に必要な単位はそろっている。あと1年分の学費を納めれば、晴れて卒業証書をもらえるのだが……。