「やさしい社会」のイメージ

品川駅前に着くと、演説会はすでに始まっていた。
 

2015年6月27日、渋谷で演説する山本氏 Photo by Getty Images

壇上では立候補者の一人、自然保護活動家の辻村千尋氏がマイクを握っていた。
「誰かの犠牲の上に立つ繁栄というものはやめるべきだと思います。日本 1個分の暮らしをしましょう」
 
そして「女性装の東大教授」として知られる安冨歩氏が聴衆に語りかけた。

「戦闘機を買って国を守れると本当に思われますか? 私たちができる唯一の国防は、信頼関係の輪を張りめぐらすことでしか、ありえません」
 
後ろの方でパンを食べながら聞いていた田村さんは、「こういうのっていいなあ」と思った。駅前には相当な人だかりができていたが、不思議となごやかな雰囲気だった。みんな選挙ボランティアの誘導に従い、障がい者向け点字ブロックの周りをあけて立っているのが印象的だった。候補者たちの主張はバラバラだが、「やさしい社会をつくりたい」というメッセージは共通しているように感じた。
 
八方ふさがりで息苦しい日常に小さな風穴が開いたような気がした。「寄付はしない」と決めていたが、心が動かされた。財布をのぞくと、帰りの交通費 が入ったスイカのほかに、千円札が一枚だけ入っている。お札を握りしめて、寄付の列に並んだ。