食のスペシャリスト&グルメに精通する識者で構成される「FRaU Foodies」が、今イチオシの料理やスイーツなどをお届けします。パンコーディネーターでモデルのパン野ゆりさんオススメの“世界のパン”シリーズ。ラストは、エチオピアのパン。見た目も食べ方も個性が炸裂です!

東京初のエチオピア料理店で
伝統的なスタイルを楽しむ

「土地ごとの特色をパンに映し、パンで世界旅行している気分になっていただけたら!」と、4回に渡って世界のパンを紹介してくださったパン野さん。イタリア、メキシコ、中国とご紹介してきた、パンのワールドツアーはエチオピアで終着。そのパンは「衝撃的!“雑巾パン”と揶揄されるほどインパクトがあります」と言います。それは「インジェラ」。

「エチオピアでは主食として食べられていて、紀元前100年にはすでに存在していたと記す書物もあるほど歴史があります。本来はエチオピア北部の高原地帯の食べ物であり、19世紀末のエチオピア帝国の拡大に伴い、南部の地域にも広まっていったそうです」。

このインジェラが食べられる店としてオススメいただいたのが、中目黒にある「クイーンシーバ」。「日本でエチオピアのごはんが食べられる店がない」とオーナーのソロモンさんが、東京初のエチオピア料理店としてオープン。2020年4月で30周年を迎えます。

素材はエチオピアをはじめ、アフリカ大陸各国から集められているから、現地そのままの味が楽しめます。それらを味わうのに外せないのがインジェラです。では、パン野さんにさらなる解説をお願いしましょう。

インジェラ ¥500(手前)。奥のパンは後述

「イネ科の穀物、テフ粉を水で溶いて2週間以上かけて発酵。巨大な鉄板で薄いクレープ状に片面のみを焼き上げて作られます。蓋をして蒸すことにより、鉄板に接していない面まで火を通します。発酵した生地にできる黄色い上澄みは『イルショ』と呼ばれ、一部は次にインジェラを作る時に再利用されます。エコですね!

焼き上がった生地に空いた多くの穴は「アイン(目)」と呼ばれ、インジェラには欠かせないもの。穴の数の多さがインジェラの出来を評価する要素になるそうです。焼き上がりの色が薄いインジェラが上出来とされますが、濃い色に焼き上がったインジェラの方が、より豊かな風味を持つのが面白いなぁと思います」

独特の方法で作られるインジェラですが、食べ方も一風変わっています。

「タオルのようにクルクルと巻かれている生地を平らに伸ばして、そこから好きな量をちぎり、3本の指で好きな煮込み料理(ワット)をつまんでいただきます。

私はまずパンだけでいただきました。ヨーグルトのような独特な酸味がありますが、ドイツパンなどのライ麦パンを食べ慣れている人であればクセになります! 発酵食品独特の発酵臭もあるものの、付け合わせのシチュー(ワット)をつけて食べればそこまでクセを感じません。食感がとてもしっとり柔らかなので、日本人には食べやすいはず」

パン野さんのおっしゃる通り、ワットをつけて食べるのが王道。日本におけるごはんとおかずのような関係を思い浮かべていただけるとわかりますでしょうか。

エチオピアントラディショナル盛り合わせ 1人前¥3300(注文は2名から。写真は2人前)

それを堪能できるのが「エチオピアントラディショナル盛り合わせ」。いわゆるエチオピア料理の入門編ともいうべきセットメニューです。5ピース分のインジェラの上にワットをのせるエチオピアの伝統的なスタイル。

中央にあるのが「ドロワット」(チキンのレッドペッパーシチュー)。エチオピアを代表する煮込みで、これをうまく作れないとお嫁に行けないといわれるほどの定番料理です。ファーストインパクトは甘く、あとから辛さがジワジワやってきます。

ほか、手前の左からラム肉とじゃがいものターメリックシチュー「ヤベグアリチャ」、エチオピアのスクランブルエッグ「インクラル」、レンズ豆のターメリックシチュー「ミスール」です。どれもマイルドな口当たりで、ドロワットのような辛さはありません。