冬の全国高校サッカー選手権大会は、「センシュケン」と呼ばれ親しまれる。地上波でのテレビ放映がある点では、Jリーグ以上のコンテンツ。堀北真希、新垣結衣、広瀬すずなど、歴代の「応援マネージャー」はいずれも人気女優になっている。サッカーを志す若者にとって、“夏の甲子園”に近い存在だ。
「燃え尽きる」
それほど憧れる、出場をかけて青春を謳歌する大会だろう。アマチュアにもかかわらず、数万の観客が入る試合もある。全国の高校生が、そこに夢を見る。
欧州や南米に、こうした大会はない。学校体育という概念が乏しく、サッカー選手が育成される場は、クラブが大半。プロクラブの下部組織で、海外の選手は育つものなのだ。
高校サッカーの頂点であるセンシュケンは、日本特有の文化と言える。
センシュケンがもたらしてきたものと、これからとは──。
清水商の「最高傑作」
センシュケンを目指す競争の中で、日本サッカーを支える選手が数多く生まれてきた。
とりわけ静岡県は、強豪校がひしめく時代があった。
「静岡を制するのは、全国で優勝するより難しい」
そう言われた時代だ。
特に清水商業は、センシュケンの常連で3回も全国制覇を達成し、王国を築いている。藤田俊哉、名波浩、望月重良、川口能活、田中誠など錚々たる日本代表選手たちを、毎年のように輩出。1995年に入学した小野伸二は、センシュケンには出られなかったものの、清水商が生んだ最高傑作と言えるだろう。
