親の期待を打ち砕くための
退学という選択

親が子ども自身ではなく子どもが通う学校を誇っていることに、“幸運”にも在学中に気づくことができた子どもには2つの選択肢ができる。従順に親の期待に応え続ける道を選ぶか、ありのままの自分を認めてもらうために、親の期待を打ち砕くかである。

親の期待を打ち砕くことにした子どもは、勉強をやめ、成績をとことんまで落とし、「自分はあなたの思い通りにはならない」と無言で示す。それでもごちゃごちゃ言われると、学校に行かなくなる。さらにそれでも親がコントロールの手をゆるめないと、学校をやめる選択をすることもある。

「学校をやめる」と言っても自分の親が認めてくれないことは重々承知だから、大きなトラブルを起こして学校をやめざるを得なくなる方法を無意識のうちに選択する。執拗な親の手をほどき、自分の人生を歩み出すためにそこまでしなければいけなかった子どもたちの話を私は幾度か聞いたことがある。

ある学校の教頭は、子どもの反抗期が強く出て、その原因が親の過度な期待による部分が大きいと見立てた場合には、「お父さん、お母さん、もう少しほっといてあげてください。ほうっておいてもこの子はそう簡単に崩れたりしないから」とアドバイスするという。それでも自分が勝手に敷いたレールの上を子どもに進ませることにこだわる親は、かえって子どもに退学などの余計な回り道を強いることになるか、最悪の場合、子どもをつぶしてしまう。

「素直で親のいう通りにする」ことの危うさもある。反抗期はあることが当然なのだ Photo by iStock

もちろん親自身は自分が「ソフトな洗脳」をしていることに無自覚である。「本人の意志を大事にしたい」と言いながら一方で「でも最低限○○大学レベル以上には入ってもらわないとね」などと自分勝手な基準を当たり前のようにもっていないか、ときどき胸に手を当てて考えて見てほしい。

そこで「大丈夫だろうか?」と自分を疑えるくらいがちょうどいい。むしろ「自分は絶対大丈夫」と迷いがないひとがいちばん危ない。特に「うちの子、反抗期らしい反抗期がない……」という場合には要注意だ。子ども自らが「ソフトな洗脳」に甘んじてしまい、親の価値観のカゴから飛び出そうとする意欲すらない可能性がある。

開成・麻布はじめ中高一貫の名物教師たちから話を聞いたリアルなアドバイス。子どもに「くそばばあ」と言われたら、あなたはどうしますか? 
「あなたのため」と言いながら、子どもが追いつめられていった「教育虐待」の現場を取材。追いつめられた子どもたちがどうなっているのか。目を背けてはいけない現実がある