連続殺人鬼に「アメリカの白人男性」が多い理由

話題作『テッド・バンディ』監督が語る

アメリカの犯罪史上最悪のシリアルキラーと呼ばれるテッド・バンディ。70年代に、少なくとも30人もの女性を強姦・惨殺し、被害者の首を切って並べたり、屍姦したりなど、女性そのものを恨んでいるとしか思えないほどの残虐な犯行に及んだ。

テッド・バンディ
 

しかし彼は、IQ160の頭脳とハンサムな容姿、そして巧みな話術を持っていた。犯人としてメディアに取り上げられると、そのカリスマ性から一躍時の人に。彼の無実を信じるグルーピーのような女性たちが現れ、裁判に集結した話も有名だ。なんと彼と結婚して子供までもうけた支持者もいたというから驚きである。

バンディは1989年に死刑が執行されこの世を去っているが、それから30年の時を経て、彼が犯罪を重ねている最中に付き合っていたガールフレンド、エリザベス・クレプファーが綴った著書『The Phantom Prince: My life with Ted Bundy』(1981年出版)を映画化した『テッド・バンディ』が12月20日に公開される。

本作を監督したのは、20年以上にわたりアメリカのドキュメンタリー界を牽引するジョー・バリンジャー。彼が監督し、エミー賞およびアカデミー賞を受賞したドキュメンタリーシリーズ『パラダイス・ロスト』(1996年から2011年)は、無実の罪で逮捕された少年3人を追ったもので、同作によって彼らの解放を求める世界的なムーブメントが巻き起こり、ジョニー・デップもこの運動を応援していた。結果、少年3人は2011年に釈放されることとなる。

そんな社会に訴えかける作品を作り続けるバリンジャー監督が、『テッド・バンディ』に込めたメッセージとは。

悪魔は悪魔の顔をしていない

『テッド・バンディ』より

――シリアルキラーを追うドキュメンタリーや映画には、犯行の残虐性に重きを置いたり、犯人の不幸な過去を紐解くものが多いですが、本作はどちらでもないのがユニークですね。暴力的なシーンもほとんどありません。

バリンジャー監督:私はシリアルキラーがなぜ殺人を犯したかという理由よりも、“シリアルキラーが普通の人間として社会に溶けこんで生きていた時期”に興味があるんです。この映画は、人間の欺きや裏切りを描いた作品です。バンディの周囲の人々は、彼がまさか連続殺人を犯せるような人間だとは露とも思っていなかったんです。怪しい証拠が揃っていたのにもかかわらず、彼は長い間自分の犯罪から逃れていたんです。

つまり、どんなに外見がよくてどんなにチャーミングな人でも、私たちはそうすんなりと人を信じてはいけない。それをこの作品を通して伝えたかったんです。