世界経済は「停滞局面」にある
これまで当コラムでは、個別の話題にフォーカスしてコメントをしてきたが、全体感を示す「ビッグピクチャー」を明確に示したことがなかったので、今回は、年末のこの場を借りて提示してみたい(この手の「ビッグピクチャー」についての質問を受けることが多くなったこともあるので)。
結論を先にいえば、これまでのアベノミクスについては、日本経済の流れをデフレスパイラルからまだ十分ではないながらもデフレ脱却の方向性へ変えたという点で評価している。ただし、まだ点数をつけて総括をする段階ではなく、最終的なアベノミクスの評価は来年の動向如何で決まると考える。
そこで、まず、現在の世界経済に対する見方について言及したい。
IMFが発表している世界の実質GDP成長率をみると、2018年1-3月期の前年比+4.2%をピークに減速し、直近時点で3.1%まで減速している(2019年暦年の見通しは同+3.0%)。
この成長率を過去と比較すると、1990年代序盤、2000年序盤とほぼ同じである。これらの時期はいずれも大きなバブル崩壊(日米欧での不動産バブル崩壊、及びITバブル)後の調整局面に当たる。今回は2008年のリーマンショック後とはいえ、リーマンショックからはすでに10年の月日が経過している。
したがって、過去と同じようなバブル崩壊後の調整局面かどうかは微妙だが、いずれにせよ、「停滞局面」にあるといってよいだろう。そして、世界の貿易数量の減速もこのIMFの世界実質GDP成長率の動きと整合的である。
