映画「パラサイト」が描く、韓国のおそるべき「超格差社会」

これは、韓国だけの現象ではない
金 敬哲 プロフィール
 

災いを呼ぶ半地下部屋の窓

韓国では「ディテール・ポン」といわれるほど、細部までこだわった演出で知られるポン・ジュノ監督は、この映画でも半地下部屋での暮らしぶりを徹底してリアルに描いている。

たとえば、上の階の住民のWi-Fiを無断利用するため、ギテクの長男のギウ(チェ・ウシク)と長女のギジョン(パク・ソダム)は、家で最も高いところにあるトイレの便器の上へ上がる。部屋の大半が地下の半地下部屋では、汚物が浄化槽から逆流しないよう、トイレは部屋でいちばん高いところに設置されているのだ。

Wi-Fiを無断利用する長男と長女

災いの元となる天井の下の窓も、半地下ならではの独特な構造になっている。窓がまったくない地下に比べて、半地下には部屋の地上部分に小さな窓が存在する。半地下部屋の居住者は、この窓を通じて家の前を通る人々の足だけを見て生きている。

地上スレスレにある半地下部屋の窓

しかし、地下部屋との唯一の違いであるこの窓は、映画で見られるように、さまざまな災難を呼ぶ窓でもある。

酒に酔った人が窓のそばで立ち小便したり、洪水が発生すると窓から水が室内に氾濫するといった悲劇が起こるのだ。また、半分が地下に隠れてしまった窓を通じて、太陽の光が室内へ入ってくる時間は極端に少ない。おかげで室内はいつも湿っていて、カビの臭いが鼻をつく……。まさにこの匂いこそが、映画でも表現されている「貧しさの匂い」なのだ。

「超格差社会」韓国の現実

一方、ギテクの家族がパラサイト(寄生)するパク氏一家は、韓国の上流1%に該当する超富裕層だ。グローバルIT企業の若きCEOであるパク氏(イ・ソンギュン)の大邸宅は、美しい坂道を登ってやっとたどり着いたと思ったら、さらに門の前の階段を上がってようやく本宅に到着するという高地にある。「半地下の家と丘の上の大邸宅」、これがまさに超格差社会韓国の現実である。

パク氏一家が暮らす豪邸

ギテクの家族は全員、韓国社会の熾烈な競争から脱落した人々だ。 ギテクはかつてチキン屋やカステラ屋を営んでいたが、店がつぶれてしまった。長男のギウと長女のギジョンは大学入試に失敗し続けているし、スポーツ選手を目指していたギテクの妻チュンスク(チャン・へジン)も目標を達成できなかった。

大学入試の成功を祈る家族たち(photo by GettyImages)

四人家族全員が無職で、怠惰な一家だと思われるかもしれないが、一度レースから外れると戻るのが極めて難しい、韓国の厳しい競争社会における、ある意味、平凡な家族でもある。