(左)逸木裕さん、(右)江夏正晃さん

AIがヒトを超えるとき、私たちが創作する時代は終わるのか

音楽家と小説家、AIを語る(前編)
AIでモーツァルトの新曲を作る――。高校生とクリエイターによる画期的なプロジェクトProject Z)をご存じでしょうか。株式会社マリモレコーズ代表取締役で音楽プロデューサー・作曲家の江夏正晃さんは、同プロジェクトで作曲と音響を担当しました。

AIが作曲を担う世界とは? 未来の「作曲家絶滅時代」を描いた小説『 電気じかけのクジラは歌う』の著者・逸木裕さんと江夏さんの対談を実施。二人の対話から見えてきた、AI時代を生き抜くヒント――。

(写真:杉山和行)

作曲家が仕事を失う世界

江夏:実はこの取材、お断りしようかと思っていたんです。でも、普通のインタビューではなく、小説家の方がお見えになると聞いて、面白そうだなと。

逸木:あはは、ありがとうございます!

江夏:今回、『電気じかけのクジラは歌う』という作品を書かれたのですね。

逸木:はい。近未来に音楽を作るAIが社会に浸透して、ユーザーはAIに自分好みの曲を作らせてそれを聴いている世界を描きました。江夏さんに申し上げづらいのですが、小説の中では作曲家の方はもう仕事を失ってしまい……。

江夏:いえいえ、正直、そういう時代は来ていると思います。

 

逸木:そんな世界で、天才作曲家が自殺してしまい、彼が残した曲の謎を追っていくミステリー小説です。AIが無限に曲を作れるなら、人が曲を作る意義はどこにあるのかというテーマも扱う物語なので、江夏さんが参加された「AIでモーツァルトの新曲を生み出す」プロジェクトが気になりまして。

江夏:面白い世界ですね。AIの前に少しコンピューターについてお話しさせてください。ぼくはもともとサラリーマンで、メーカーの海外プラントの土建設計をやっていたんです。音楽とはまったく違う世界ですよね。

逸木:ええ。

江夏:当時は音楽についてはアマチュアだったんです。そんなぼくがなぜ音楽家になれたのか。才能ではなく、コンピューターとの出会いが大きかったんです。

逸木:才能ではない…?