12月31日 近代解剖学の創始者、A・ヴェサリウス誕生

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

近代解剖学、特に人体解剖の分野で創始者といわれているアンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius、1514-1564)がこの日、現在のベルギー・ブリュッセル(当時は神聖ローマ帝国治下)で生まれました。

 

ヴェサリウスは、神聖ローマ皇帝マクシミリアン大帝(マクシミリアン1世、Maximilian I、1459-1519)の侍医の私生児として生まれました。父の家業と同じ道に入るためにルーヴァン大学やパリ大で医学を学び、さらにイタリアのパドヴァ大学で博士号を取得しました。

【写真】アンドレアス・ヴェサリウス
  アンドレアス・ヴェサリウス。「ファブリカ」扉の著者肖像画 photo by gettyimages

彼はパリ大学で、古代ローマの医学者で、医学を体系的に構築したガレノス(Galenus、129?-200?)の業績に出会い、人体解剖に興味を持つようになりました。博士号取得後は、パドヴァ大学で外科学・解剖学の教授に任命され、その講義は学生の間で大きな人気を集めました。

当時、解剖実習の講義では、講師である学者は講義をするだけで、実際の解剖は床屋や外科手術技能者が担当していました。しかし、ヴェサリウスは自らメスをもって解剖し、学生はその解剖台を取り囲むようにして聴講したのです。実地に学べるため、わかりやすいことが学生の間で評判となったのです。

【写真】ヴェサリウスの講義の様子
  「ファブリカ」で描かれている大盛況の講義の様子。中央のヴェサリウスと思しき人物が腹腔内の臓器を説明している photo by gettyimages 
【写真】モンディーノ・デ・ルッツィの解剖学書より、当時の解剖の様子
  当時の解剖の様子。中央で学者が手術者に指示している。M・ルッツィの解剖学書より photo by gettyimages

ヴェサリウスが人気を集めたもう1つの理由は、学生のための精細な解剖図を持っていたことです。それらの模造品や複製が出回るに及んで、彼はそれらの図譜を正式に出版しました。

こうして20代で医学者として名声を得たヴェサリウスでしたが、激しい論争にも巻き込まれました。自らの解剖によって、ガレノスの研究が動物解剖をもとにしていることに気づいた彼はそれを発表し、当時の医学者から大きな反発を受けたのです。また、実際にメスを握る彼は、ほかの医師たちから「床屋」と呼ばれ、馬鹿にされたと言われています。

1543年、画期的な解剖学書である"De humani corporis fabrica":『人体の構造に関する七つの本』(通称fabrica:ファブリカ)を、画家J・S・カルカル(カルカールとも。Jan Steven van Calcar、1499–1546)の協力を得て出版しました。

「ファブリカ」は、その当時の権威的存在だったモンディーノ・デ・ルッツィ(Mondino de Luzzi 、1270?– 1326。14世紀のイタリアの医師・解剖学者)の解剖書や、その背景にある古代ローマの医学やギリシアの知識体系とは対照的で、先進的なものでした。

また精細でリアルな絵は、ダヴィンチらとともにルネッサンス期に美術解剖として芸術の一分野をなすきっかけにもなります。

【写真】ファブリカの画
  「ファブリカ」収載の解剖図から、その1。体壁を左の浅層から順に深層へ。腹直筋が胸部の上の方まで伸びているのは、ガレノスなどのサルの解剖の影響が残ったと思われる photos by gettyimages
【写真】ヴェサリウスより
  「ファブリカ」収載の解剖図から、その2。全身の循環動脈系と門脈系の図。心臓が2心房2心室で循環器系の中心にあることや、肝臓が2葉であることなども、ヴェサリウスが解剖によって明らかにしたと言われる photos by gettyimages

処刑された死体の解剖の許可を得ていたヴェサリウスは、ボローニャ、ピサなどで公開解剖を行って絶賛を博します。また、臨床の分野でも、「ファブリカ」で献辞が捧げられているカール5世(Karl V、1500-1558。前記マクシミリアン1世の孫)とその息子であるフェリペ2世(Felipe II、1527-1598)の侍医として、スペイン・ハプスブルクの宮廷でも活躍しました。

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