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もし東京で大地震が起きたら「群衆なだれ」が大惨事を起こす

地震が来ても、すぐ逃げてはいけない

東日本大震災では帰宅困難者が都内に溢れかえったが、ただ「帰れない」という問題では済まない。東京直下の地震が起こったとき、密集した人たちが折り重なって倒れ、命を落とす危険性がある。

 

満員電車の比ではない

経済被害95兆円、建物全壊61万棟、死者2万3000人――。東京都心南部で、マグニチュード7程度の大地震が起こった場合、想定される最大の被害だ(内閣府推計)。

大地震は建物倒壊や列車の脱線、液状化現象のほか、関東大震災でも発生し、街を焼き尽くした火災旋風など、さまざまな災害を連鎖的に引き起こす。だがそれ以外にも、ある恐ろしい現象が、壊滅的な被害を及ぼす。

それは、「群衆なだれ」と呼ばれるものだ。大地震後のパニックで、1ヵ所に詰めかけた大勢の人が折り重なるように倒れ、下敷きになった人が命を落としてしまう。

私たちが普段使っているビルの出口、駅の階段や歩道橋、そして何の危険もないはずの大道路でさえもが、悲劇の現場となる可能性があるのだ。

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ではいったい、群衆なだれはどのようなメカニズムで発生するのか。神戸大学名誉教授の室崎益輝氏が解説する。

「群衆なだれは、とても自分の力では立っていられないような混雑のなかで発生します。

隣の人の身体で支えられている状態で、誰かがつまずいたり、落とした物を拾おうとしてかがんだりすると、突然隙間ができて、支える人がいなくなるかたちになります。

そうすると、そのスペースに数十人分の力がかかり、人が次々と押し出されていき、上に折り重なっていきます。下の人は身動きが取れないまま、何十人分もの体重で身体が圧迫され、呼吸困難などで死に至るのです」

群衆なだれが発生する混雑の基準は、1平方メートルあたり10人。満員電車(乗車率200%と計算)でも1平方メートルあたり6人くらいの密度なので、その2倍弱の混雑ぶりだ。

朝の通勤ラッシュの比ではない。しかも、群衆なだれで起きる混雑状態は、満員電車と根本的に異なる面がある。