『いだてん~東京オリムピック噺~』はいよいよクライマックスを迎える

視聴率低迷も実は傑作!? 本日最終回『いだてん』のクライマックス

志ん生を演じた、たけしの〝役割〟
 

セリフのモデルはあの有名ギャグか!?

NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』がきょう12月15日に最終回を迎える。

先週放送の第46回では、こんな一幕があった。いよいよ東京オリンピックの開幕が迫った1964年、ビートたけし演じる落語家の古今亭志ん生が高座に上がると、噺のマクラとして、大会で活躍が予想されたチェコスロバキア(当時)の女子体操選手ヴェラ・チャスラフスカをネタにする。

ヴェラ・チャスラフスカ(photo by GettyImages)

「海外から有名な選手が続々とやって来ます。
『おお、旦那、物干しにつかまってぐるぐる回ってんのは、ありゃどこの花魁だい?』
『あれはおまえ、食いこみ太夫の、おまえ、女子体操のチャスラフスカだ、おまえ』
『チェコスロバキアのチャスラフスカ? チャスラフスカ!』」

志ん生はこのあとも「チャスラフスカ!」と名前を連呼するのだが、これには、たけしの往年のギャグ「コマネチ!」を思い出さずにはいられなかった。

ナディア・コマネチ(photo by GettyImages)

1976年のモントリオールオリンピックの同じく女子体操で活躍したナディア・コマネチをネタにしたこのギャグを、時代をさかのぼり、志ん生とチャスラフスカという組み合わせで再現したのだろう。宮藤官九郎らしい当て書きである。

視聴者の反応は微妙だったが・・・

宮藤官九郎がオリンピックを題材に大河ドラマを書く。そう発表されたのは、いまから3年前、2016年の11月だった。

さらに翌年4月には、『いだてん~東京オリムピック噺~』というタイトルと、主人公の金栗四三と田畑政治をそれぞれ中村勘九郎と阿部サダヲが演じることが発表される。

同時にドラマの語り手が古今亭志ん生になると告知されるや、誰が演じるのかと思ったものだ。強烈な個性で知られた志ん生だから、俳優が演じるにせよ、落語家が演じるにせよ、どうしたって違和感は残るだろう。いっそ、残っている志ん生の音源から再構成するとか、CGで登場させるとか、それぐらいしないとうるさ型の落語ファンは納得しないのではないか……。

そんなふうに考えていたところ、それから半年ほどして、志ん生はビートたけしが演じると発表され、「その手があったか!」と意表を突かれた。拙著『ビートたけしと北野武』(講談社現代新書)で、たけしが実在の人物に扮した映像作品についてさんざん論じておきながら、予想できなかったのはまったく不覚であった。

たけしはこれ以前、やはり落語家の立川談志をドラマ『赤めだか』(TBS系、2015年)で演じている。

そこで彼の演じた談志は、姿かたちもしゃべり方もまったく当人に似ておらず、たけしそのものだった。

だが、弟子に説教する場面など、ときおり談志が顔をのぞかせるかのようなところがあった。談志もそうだが、それ以上に破天荒な人生、芸風で知られる志ん生ともなれば、どれだけ役づくりしたところで似せられるものではない(井上ひさし作の舞台『円生と志ん生』では角野卓造やラサール石井が志ん生に扮したとはいえ、それは舞台だから成立したのではないか)。

それならば、演技ではなく存在感をもって当人に似せていくしかない。そこで現代において志ん生の位置づけに近い人物は誰かと考えた結果、たけしが選ばれたのだろう。たしかに彼以外に誰がいるのかというキャスティングである。

ただ、いざ今年1月に『いだてん』が始まると、たけしに対する視聴者の反応は微妙だった。当初より視聴率が伸び悩んだため、その原因を、やや複雑な物語構成とあわせて、たけしの滑舌が悪く、聞き取りにくいからだとする声も上がった。