「明日は晴れるかな?」その疑問、「偏微分方程式」でスッキリ解決!

世の中のしくみを解き明かす応用数学
斎藤 恭一 プロフィール

たとえば、物質を大気中の水の重さ(=湿度)、熱を気温、運動量を風速とします。物質、熱、そして運動量の時空座標(t, x, y, z)の微小空間&微小時間内で収支をとると、天気を表す偏微分方程式が作れます。

天気予報というのは、雨、気温、そして風速の数値を、ある場所(たとえば東京都千代田区丸の内東京駅付近)で、明日の一日中、時刻ごとに提供することです。

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昔はそんなに狭い地域を1時間ごとに予報することなどできませんでした。

しかし、現在ではスーパーコンピュータのおかげで、地域を三次元のメッシュで切り分けた格子のなかで成り立つ連立の偏微分方程式などを高速で解けるようになり、数値予報ができるようになりました。

もちろん地球規模の気象予報もできます。偏微分方程式は、天気を予測するのにも役立っているのです。

「ジワジワ」の現象を数値で体感!

もっと身近な“ジワジワ”の現象を表すのにも、偏微分方程式が活躍します。

私たちの身のまわりには“ジワジワ”と起きることがたくさんあります。

「熱い紅茶の入ったカップに角砂糖を投げ込んで、スプーンでかき回さずに、カップの底をのぞき込んだら、砂糖が“ジワジワ”と溶けていき、やがて角砂糖が消えた」

「皿にのせた豆腐に醤油をかけたら、表面から醤油が“ジワジワ”と浸み込むのが、豆腐の断面から見えた」

「寒風の中を自転車をこいで家に帰り、下着を脱いで、風呂に入っていると、冷えた体が“ジワジワ”と温まってきた」

「暑い夏、通りかかった八百屋の店先の特売のスイカを持ち帰り、冷蔵庫で冷やした。すぐに冷えるかと思ったが、“ジワジワ”と冷えていくようだ」

上の2つは物質が“ジワジワ”拡散していく様子、下の2つは熱が“ジワジワ”伝わっていく様子です(これらの現象を式で表した科学者がいて、それぞれ「フィック(Fick)の法則」、「フーリエ(Fourier)の法則」と呼ばれています)

それをさらに微小時間&微小空間で作った収支式に代入すると、砂糖の溶け具合、醤油の浸み具合、体の温まり具合、そしてスイカの冷え具合を偏微分方程式で表せます。

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その偏微分方程式を解くと、「●分後に醤油が豆腐にどれくらいの深さまで浸み込んでいくのか」など、「“ジワジワ”の時間変化」を数値で体感できるのです。

 

私がこれを知った大学2年生のとき、まさに奇跡だと思いました。

数学には「純粋数学」と「応用数学」という分け方があります。大学のとき、授業で「解析概論」(たとえばε-δ論法)や「線形代数」(たとえば固有値)といった純粋数学を習った私は、なんでこんなことを学ばないといけないのかわからなかったし、教科書を読んでも、まったくおもしろくありませんでした。私は留年しないようにだけ勉強していました。

それが、身近な原理や現象を式で解析する「応用数学」に出会い、イメージを描ける偏微分方程式の楽しさを知ったのです。

応用数学万歳! ブルーバックスの新刊『道具としての微分方程式 偏微分編』を読めば、“ジワジワ”と感動がやってきます。