イージス・アショアに町を滅ぼされる…山口県阿武町の住民の「怒り」

現地ルポで見えた、あまりの理不尽さ
半田 滋 プロフィール

さらに、阿武町にはレーダー波どころか、発射する迎撃ミサイルの第1弾ロケットにあたるブースターが落下する危険さえある。防衛省は「遠隔操作でむつみ演習場内に落下させる」と説明しているが、まともに受け取る住民はまずいない。

昨年10月12日には、萩市議会に出席した防衛省の五味賢至戦略企画課長(当時)が迎撃ミサイルの2段目、3段目ロケットの落下場所について「絶対に陸上に落ちないとは言えないが、弾道ミサイルがわが国領域に直撃することと比較すると、被害は比べものにならない」と発言、市議会に出席していた阿武町の花田憲彦町長が「町民に犠牲になれと言うのか」と激怒する場面もあった。

 

「過疎脱却」の努力は踏みにじられる

花田氏がイージス・アショアの配備計画に怒る理由は、ほかにもある。日本海に面した阿武町は、豊かな自然に恵まれ、「平成の大合併」でも萩市との合併を避けて単独で歩む道を選んだ。日本初の「道の駅」をつくった構想力を生かし、農業の法人化や若者の定住策づくりに積極的に取り組んだ。

町職員だった花田氏はそうした取り組みを引き継ぎ、「選ばれる町をめざす」を掲げて移住を呼び込み、過疎の町からの脱却を目指してきた。

その成果は着実に上がり、人口の社会増は5年間で3・9%のプラスと全国で17位。町の人口は社会増よりも自然減が上回り、3274人と減少傾向にあるものの、独自の取り組みは山口県内外の自治体から注目を集めてきた。

花田氏はインタビューの中で「その移住者から『イージス・アショアがあったのならIターンの選択肢はなかった』と言われた。移住がなければこの10年間で300人減り、後継者不足から産業も衰退していたのではないかと思う。町が大事にしてきた施策をひっくり返すのか。そこに一番の憤りがある。ある意味で町の存亡に関わることだ」(6月21日、河北新報)と述べている。