イージス・アショアに町を滅ぼされる…山口県阿武町の住民の「怒り」

現地ルポで見えた、あまりの理不尽さ
半田 滋 プロフィール

白松さんは「息子に白菜づくりを続けろとは言えない。農業をやめるしかない」と話す。23年前の転落事故で車椅子の生活を与儀なくされ、耕作は息子たちが引き継いだ。自身は農家民宿を立ち上げる一方、自然に恵まれた阿武町の魅力を都会の人に知ってもらう「お試し移住」の旗振り役を務めた。

「阿武町に移住して農業をしたい」。そんな相談は年に10数件あった。しかし、イージス・アショアの候補地と防衛省が発表した昨年6月以降の問い合わせはゼロになった。

「強力なレーダー波を浴びるかも知れない町に、だれも移住しようとは思わない。風評被害だけでも町は駄目になる」

「イージス・アショアの配備は町を滅ぼす」と県民大会で訴える白松博之さん

「レーダー波」防衛省は安全と言うが…

防衛省は地元対策として今年3月、新屋演習場、むつみ演習場の2カ所に陸上自衛隊の中距離地対空ミサイル「中SAM」のレーダーを持ち込み、電磁波の影響を調べた。その結果、前出の「230メートル離れれば安全」を打ち出した。

しかし、宇宙空間まで届くイージス・アショアの出力は、中SAMのレーダーとは比べものにならないほど大きい。また、強力なレーダー波ほど「サイド・ローブ」と呼ばれる横漏れする電磁波も強い。レーダーは機種ごとに特性があり、米国で新しく開発する日本版イージス・アショア専用のレーダー「LMSSR」の完成を待って実測しなければ意味がないといわれる。

 

健康に不安を感じる住民らは、防衛省の地元説明会に先立つ今年1月、萩市で緊急講演会を開いた。講師として招かれた電磁波環境研究所長の荻野晃也さんは電磁波が人体に及ぼす様々な健康被害の可能性を指摘し、「強力な電磁波は3kmまではとても強く、10km程度までは用心が必要だ」と話した。

イージス・アショアの配備予定地から3km以内には、民家や小学校、診療所、道の駅、酒造場、牛舎・豚舎、農地など阿武町の生活圏がそっくり入る。西台によって「サイド・ローブ」がすべて跳ね返される訳ではない。この後にあった防衛省の地元説明会で、いくら防衛省が「安全」を強調しても、住民らは納得するはずもなかった。