『アナ雪2』エルサの「スピリチュアルな自己実現」の奇妙さを考える

この展開は、面白くてポジティブなのか
北村 紗衣 プロフィール

観客の意見と続編

第2作を見て驚いたのは、著者が第1作を見て不満に思ったところから物語が出発しているということだ。著者は実はかなりのディズニー嫌いで、基本的にディズニーを信用していないので、あまり期待をしていなかった…のだが、『アナと雪の女王2』の冒頭で、既にエルサはアレンデールの女王としての暮らしになんとなくしっくりこないものを感じており、もっと自分らしく生きるべきではないか、と考えている。

そしてエルサの自己実現は、かつてのディズニーのような王子様との恋とか結婚ではなく、自らの魔力を認めてくれる同類の人々と暮らすことによってなされる。おそらく、著者以外にもエルサが女王としての責任を果たすことを一種のハッピーエンドとする結末に疑問を感じていた観客はいたと思われるのだが、この展開はそうした観客の意見を汲みつつ、今までのディズニーとは違う新しい方向性を模索しようとするものだ。

 

一方でディズニーが受け容れなかった観客の意見もある。続編制作に向けて、ファンの一部が「エルサにガールフレンドを」(#GiveElsaAGirlfriend)というツイッターハッシュタグを作って運動したことがあった。エルサがレズビアンのディズニープリンセスになれば画期的なことであり、セクシュアルマイノリティの若者たちに対して非常にポジティヴなメッセージになるから、というのがこのファン運動の理由だ。

このような運動や苦情は風変わりに見えるかもしれないが、実は英語圏では18世紀に近代小説が始まって以来、長きにわたって続いているファン文化のひとつだ。英語の近代小説を確立した作家のひとりであるサミュエル・リチャードソンは、自分の小説の展開について熱狂的なファンからいろいろなリクエストやら不満やらを受け取っていた。こうしたファンの意見は受け容れても受け容れなくてもかまわないので、リチャードソンはあまり採用しなかった。

サミュエル・リチャードソン〔PHOTO〕WikimediaCommons

ディズニーも#GiveElsaAGirlfriendの意見は受け容れず、第2作のエルサはむしろ恋愛に興味のないキャラクターとして作られている。

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