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「あみだくじの仕組み」から学ぶ いまや必須の「離散数学」

整数を制する「3種類」の数え方
これからのAI時代において、プログラミング理論などの基礎となる「離散数学」が注目されています。

ブルーバックス12月の新刊『離散数学入門』の著者であり、今までに全国200校以上で出前授業をこなすなど、「数学嫌い」な生徒への教育にも並々ならぬ関心を示している数学者・芳沢光雄さんに、離散数学への最初の第一歩を教えてもらいました!

「あみだくじ」を自在に操作する

現在の本務校・桜美林大学に勤務しはじめて回数は減ったが、それでも1990年代半ばから全国各地の200校を超える小中高校で出前授業をしてきた。

対象とした生徒数は1万5000人を超え、感想文も3000人以上の生徒からいただいたことになる(出前授業から学んだことについては「日本中で3万人に授業した私が『教育は秋田に学べ』と主張する理由」を参照)

出前授業で生徒からもっともウケた内容ベスト3は、「あみだくじの仕組み方」、「(統計データから得た)じゃんけんの有利な方法」、「誕生日当てクイズ」である。

その中でも「あみだくじの仕組み方」は、子どもたちが自宅に帰って家族に楽しく話す機会が多いそうだ。

 

上段に左からA、B、C、D、E、Fが並んでいて、下段に左から1、2、3、4、5、6が並んでいるあみだくじを考える。

このとき、たとえば「Aは3、Bは6、Cは1、Dは5、Eは4、Fは2にそれぞれ辿り着くあみだくじを作ってください」というリクエストに対応できるだろうか。

実は、誰でも1分前後でそのように辿り着くあみだくじを作ることができる(下図参照)

このあみだくじに関しては、縦線と縦線の間に書き込む横線の本数は合計9本でできるが、辿り着く先がそれとすべて一致するあみだくじ、すなわち「Aが3、Bが6、Cが1、Dが5、Eが4、Fが2」にそれぞれ辿り着くあみだくじの横線の本数は必ず奇数本になるという性質がある。

要するに、あみだくじの辿り着く先がすべて決定すると、その横線の本数が偶数か奇数かは一意的(唯一通り)に定まるという一般的な性質があるのだ。

実は、その性質の証明法は本質的に3種類ある。1つは「帰納的に数える」方法、1つは「2通りに数える」方法、1つは「対称性を用いて数える」方法である。

離散数学入門』では、あみだくじの仕組み方の説明に加え、その性質に関する3種類の証明を丁寧に述べてある。その3つの数える方法こそ、21世紀になってますます注目され、高校の学習指導要領に含めることが検討された「離散数学」という分野の特徴を物語っている。

離散数学は微分積分のような“難しい”数学とは距離を置く分野である一方、AI時代では重要な符号理論やアルゴリズム論などの基礎となる数学である。