中国人観光客が、日本の電車・バスに「感動している」意外なワケ

彼らからは日本がこんな風に見えている
中島 恵 プロフィール

バスのアナウンスのクオリティ

こうした中国人の体験談に感心した私は、今夏、上海に住む20代の男性に「日本に旅行に来たときに驚いたことはあるか」と聞いてみた。彼はこの1年間で、大阪、香川、福岡、鹿児島などをひとりで旅行するほどの旅好きだ。

 

日本語も上手で、すっかり日本に馴染んでいる彼は、急に振られた質問に対し、しばらく考え込んでいたが、突然ハッと思い出したように、こんなエピソードを聞かせてくれた。

「私は、日本の地方ではかなりの頻度でバスを利用するのですが、あるとき、バスが停まる前に席を立って、降車ドアのほうにゆっくり移動したことがあったんです。私がモタモタして、他の乗客の迷惑になってはいけないと思ったからです」

〔PHOTO〕iStock

ところが、“日本式”に気を利かせたつもりの男性は、逆に運転手から注意されてしまったという。

「『お客さま、危ないですから、停車してから動いてください』と言われたのです。その言葉を聞いて、私はものすごく驚きました。中国のバスには、停車してから席を立つという決まりや常識はありません。停車したらすぐに降りないと、バスはさっさと発車してしまうし、降りそこなったら自分が困ります。運転手も乗客も、みんな自分のことしか考えていません。

でも、日本では乗客が安全に全員降りるまで、バスは絶対に発車しないで待ってくれるんですね。それが社会の“常識”で、しっかり守られている。老人や子どもがゆっくりした動作で降りるときも、運転手さんはちゃんとミラーで見届けて、確認してからドアを閉めて発車しています。早く降りろ、と急かしたりしませんよね(笑)。日本のバスの運転手さんって、こんなにも親切なのか! すばらしい! と驚いたんです」

「乗客の安全が第一」という日本のバスの基準こそが、中国人から見れば衝撃的だったのだ。