マヤの天文台(チチェン・イツァ)筆者提供

狙いは「3000年分の泥」 マヤ文明衰退の謎に迫る大冒険!

ワニにも負けず、資金不足にも負けず…
コロンブスが新大陸に到達するよりもはるか以前、今から3000年も前に多彩な遺跡や正確な暦を残したマヤ文明。その衰退の原因を探る手がかりは、湖の底に眠っている──。

「マヤの遺跡に眠るシマシマの地層を掘り抜いて、文明衰退の謎に迫る!」クラウドファンディングを立ち上げた立命館大学の北場育子准教授は、いかにしてこの巨大な謎に挑むのか?

毒ヘビの湿原を越え、ワニのすみかを横切り、資金難に苦しみながら中米の湖を掘りまくった6年間の冒険記。

熱帯雨林に残る巨大建造物

そびえ立つ神殿ピラミッド、正確な暦、高度に発達した天文学──。

今からおよそ3000年も昔、古代マヤの人たちは偉大な文明を築き上げた。「マヤ文明」は、メキシコやグアテマラ、ベリーズなど、ユカタン半島を中心とするメソアメリカ地域で栄えていた。

 

いまなおジャングルの樹冠からのぞく巨大な建造物は、はるか昔、たしかにこの場所に人々の営みがあったこと、そして彼らが驚くほど高度な技術を持っていたことを、はっきりと物語っている。

グアテマラのティカル遺跡。北のアクロポリス(左)と神殿1(右)。周囲には熱帯雨林が広がる。
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なぜ高度な文明は衰退したのか

古代マヤの人々は、ほかの古代文明の担い手たちとは違って、さまざまな環境に適応することができた。彼らは、うっそうと生い茂るジャングルや乾燥したサバンナ、海辺の断崖の上にまで都市を築いた。

これほどまでに多様な環境に適応し、卓越した技術や知識を持っていた文明は、そう簡単には衰退しないように思える。にもかかわらず、マヤ文明は深刻な衰退を幾度となく経験してきた。

メキシコのチチェン・イツァ遺跡。もっとも有名なマヤの神殿ピラミッドの1つ、エル・カスティーヨ。春分と秋分の午後、北側の階段に当たる太陽の光と影がヘビの姿(風と豊穣の神ククルカン)を映し出す。ティカル遺跡とは対照的に、チチェン・イツァの周りには半乾燥地の低木林が広がっている。
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文明衰退の原因として、人口過剰、環境破壊、王朝間・王朝内の戦争など、いろいろな可能性が挙げられている。気候変動もその有力候補だ。

たしかにそうだ。当時よりもはるかに文明が発達した現代の私たちでさえ、極端気象による豪雨や水不足を防ぐ術は持っていない。ひとたび牙をむいた自然は、私たちの文明社会にいとも簡単に傷跡を残していく。

実際のところ、気候変動は古代のマヤ文明にどれほどのダメージを与えたのだろう──。

マヤの遺跡の発掘風景。調査しているのは、アリゾナ大学・猪俣健教授(右)率いる考古チーム。
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奇跡の地層をめぐる冒険

その謎を解くカギは、深い湖の底に眠っている。年縞(ねんこう)と呼ばれる奇跡の地層だ。