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「生活苦でも幸せ」な専業主婦たち…その幸福は、思い込みなのか

本人も気づかない「ワナ」がある

なぜ専業主婦を選ぶのか?

前回は、経済的に行き詰まる日本の専業主婦たちの実態を明らかにした。今回は、なぜ貧困や格差に耐えながらも、彼女たちが専業主婦を選ぶのかについて探ってみたい。

まず容易に想像できるのは、働きたくても働けない「やむをえない理由」がある、というものである。実際に、当事者女性がメンタルの問題を抱えている、子どもが保育所の待機児童である、病気の子どもや親の介護が必要である、といった事例が調査から浮かび上がっている。

しかし意外なことに、こうした「やむをえない理由」がある割合は、実は専業主婦全体の4分の1に過ぎない。残りの大多数は、働けるのに自ら専業主婦を選んでいる人たち、いわゆる「自己都合型」専業主婦なのだ。

彼女たちは一見、自らの意思で「合理的」な理由により専業主婦を選んでいるようにみえる。しかしその裏には、誰もがかかるかもしれない「ワナ」が存在している。

※本稿は、周燕飛『貧困専業主婦』(新潮選書)の一部を加筆・修正したものである。

 

いまだ多い「子育てに専念」という理由

〈かつて主婦『美』といわれたように、子どもが小さいうちは、子どものため、母自身の人間育成のために習得の期間として、(専業)主婦期を尊重すべき〉

──久美子さん(43歳、仮名)は、調査票でこう綴った。

貧困層の専業主婦に非就業理由を聞いたところ、「子育てに専念したい」という理由が48%と、もっとも多くなっている。「時間について条件の合う仕事がない(21%)」「子どもの保育の手だてがない(13%)」がそれに次ぐ。この3つの「子育て」関連の理由いずれかを回答した貧困専業主婦は、73%にのぼった。

専業主婦に、「仮に自分が就業したら、子どものしつけがいき届かなくなる」か否かについての意見を調査したところ、これに肯定的な意見を持つ主婦は、全体の6割強を占めていることが分かった。

子どもが小さいうちは、経済状況が多少苦しくても、専業主婦で子育てに専念したほうが「子どものため」になる──そう信じている日本人女性は、今も少なくないのだ。